2016年01月11日

峡東地域の果樹農業を世界農業遺産に [自然・体験・文化・歴史等]

世界農業遺産とは

 世界農業遺産[Globally Important Agricultural Heritage SystemsGIAHS(ジアス)]は、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり形づくられてきた農業上の土地利用や伝統的な農業、農業に関わって育まれた文化、景観、生物多様性などの保全と持続的な活用を図ることを目的に、国際連合食糧農業機関(FAO)が2002年に開始した制度です。

 世界農業遺産は、伝統的な農業を次世代に継承していくことを目指すものであり、様々な変化に対応しながら持続的な発展を続ける「生きている遺産」と言われています。

 世界では、13カ国36地域が認定されており(2016年1月現在)、日本では、2011年に新潟県佐渡地域と石川県能登地域が、2013年に静岡県掛川周辺地域、熊本県阿蘇地域及び大分県国東半島宇佐地域が2015年に岐阜県長良川上中流域、和歌山県みなべ・田辺地域、宮崎県高千穂郷・椎葉山地域が認定され、8 地域となっています。

世界農業遺産への認定を目指して

 峡東地域の果樹栽培の歴史は古く、ぶどうの甲州種は奈良時代に仏教とともに中国を経て伝来したと言われています。現在では、多くの先人の努力と叡智により、地域住民の生計や文化と密接に結びつく中で、今では桃源郷とも言われる美しい農村景観を形成するまでに至っています。

 人口減少や経済のグローバル化の進行等により、農業を取り巻く環境は厳しさを増す中、世界農業遺産への認定を実現し、かけがえのない果樹農業が育む景観や文化を末永く保全していくことで、交流資源としての活用も期待でき、ブランド化の推進にも寄与するものと考えています。

 このため、平成27年10月、山梨市、笛吹市、甲州市の峡東三市や山梨県が一体となり、「峡東地域世界農業遺産推進協議会」を設立しました。

 今後は協議会が中心となって、認定実現に向けた活動を強力に推進していきます。

峡東地域における果樹農業の特長

        「里地・里山の果実郷 峡東地域における四季を通じた果樹農業」

特徴ある伝統的な果樹農業

 峡東地域では、江戸時代以前より、甲斐八珍果に代表される四季折々に実る多品目の果樹を永く栽培してきました。地域で生産される芸術品にも例えられる高品質な生食用の果樹を中心とした歴史ある農業は、地域の宝であり、世界に誇るべき農業の姿です。

 1186(平安時代末期)に甲斐国八代郡祝村(現山梨県甲州市勝沼町)で雨宮勘解由(あまみや かげゆ)により「甲州」ぶどうが発見され、日本でのぶどう栽培が山梨県から始まったと言われています。また、718年(奈良時代)に僧行基が勝沼の柏尾で修行したところ、夢の中にぶどうを持った薬師如来があらわれたことから、村人にぶどうの作り方を教え、これが甲州ぶどうの始まりだとも伝えられています。

 江戸時代には、俳人の松尾芭蕉が山梨を訪れた際に「勝沼や馬子(まご)もぶどうを喰いながら」という句を詠んだとされています。また、江戸時代後期の書物『甲斐叢記』によれば、峡中八珍果(甲斐八珍果とも言う。)として、葡萄(ぶどう)や桃(もも)など8種の果物が紹介されており、これらの果物は、甲州街道を通って江戸に運ばれ幕府に献上されるなど、山梨は果物産地として名をはせていました。

 また、ワイン生産も古くから盛んに行われており、現在の県内ワイナリー数は80社以上にのぼり、それぞれの特徴を生かした個性的なワインが生産されています。県産ワインの原料として古くから栽培されてきた「甲州」と「マスカット・べリーA」は、国際ブドウ・ワイン機構(OIV)に登録され、世界に通用する日本産ワインとして注目されています。

    

果樹園や里山が育む多様な生態系

 峡東地域では伝統的な甲州ぶどうのほか、様々な種類や品種の果実が栽培され、多様性の高い農業が行われています。

 また、地域一帯の果樹園は山地と盆地底部をつなぐ緑のネットワークの要としての役割を果たし、ゴマシジミなどの希少な蝶類の生息環境を維持し、地域の生態系を支える重要な要素となっています。

 草生栽培による農業は、草地の 維持や地力の維持増進、農薬施用量削減に貢献しています。

   

果樹園が形成する美しい農村景観

 春は桃源郷に喩えられる満開の桃畑など、四季を通じて変化するモザイク状に配置された美しい果樹園の景観は見るものを魅了しています。

    

伝統的な栽培技術の維持発展

 ぶどうの棚仕立ては、江戸時代に永田徳本(甲斐徳本)が考案し普及させたといわれる日本独自の仕立て方で、扇状地の傾斜面に広がるぶどう棚は峡東地域独自の農業景観を醸し出しています。また、消費拡大に結び付く戦略性の高い新品種の作出や優良品種の選抜に取り組むなど、四季を通じた生産性の高い農業システムを構築しています。

     

地域に根付いた伝統・文化

 大善寺(718~)の薬師堂(国宝)内の本尊の薬師如来(国指定重要文化財)はぶどうを手に持つなど、果樹栽培と地域の歴史文化が密接に関係しています。

 盆地を囲む里山の芽吹き時期、祭祀の開催時期に応じた農事暦があり、多品目果樹栽培を支える協同組合などの活動も活発に行われています。

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