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社長背景湖

更新日:2019年5月27日

~観光事業者 経営者インタビュー Vol.3~富士レークホテル 社長 井出 泰済 氏

富士山全景

(館内レストランから見える富士山)

 

昭和7年の創業以来「富士山麓の湖畔の宿」として、多くの方に愛され、親しまれてきた富士レークホテル。早くからユニバーサルデザインに取り組んでいるホテルとして全国的に有名です。ユニバーサルデザインに取り組まれた経緯や現状について、富士レークホテルの井出泰済社長にお話を伺いました。

 

ユニバーサルデザイン(UD)とは、国籍・文化・言語・年代・性別・障害の有無などを越え、誰もが利用できる製品・施設などのデザイン設計のことをいいます。富士レークホテルは、全74室のうち23室がUD対応となっており、多くのお客様に感動を届けています。

 

ユニバーサルデザインルーム

(室内フルフラットのバリアフリールーム) 

 「将来を見据えてユニバーサルデザインに投資」

―ユニバーサルデザインに取り組み始めたきっかけは?

 

私が東京の保険会社を退職し、祖父が創業した富士レークホテルに戻ってきたのが1994年です。

当時はバブル崩壊後で、客足も減少傾向にありました。そのような状況で、生き残りのために何か新しいものをと考えていたところ、1997年に山梨県の工業技術センターで開催された中川聡さんのユニバーサルデザイン(UD)に関する講演を聞いたことが取組みのきっかけです。

当時はまだユニバーサルデザインという言葉もあまり聞きなれない時代でしたが、これから訪れる高齢化社会に対応していくことが大切だと強く感じました。

 

まずは1999年に1,000万円を投資して、一つの部屋をUD対応ルームに改装しました。

しかしながら、一般客室の稼働率が65%程度だったのに対し、UDルームは30%程度と全くお客さんが入りませんでした。

 

―なぜお客さんが入らなかったのでしょうか?

 

UDを意識しすぎて、部屋の作りが病室のようになってしまったことが原因かと思います。旅行に非日常を求めてきているお客様との間にギャップがあったようです。

旅行会社も、UDルームに賛成はしてもらえるのですが、部屋数も少ないので商品としては取り扱っていただけませんでした。

 

―途中でやめてしまおうと思いませんでしたか?

 

稼働率は低かったのですが、普通のホテルには泊まることができなかったお客さんがとても喜んでいる姿をみて、正しいことだから続けていこうと思っていました。

 

―2011年の東日本大震災のころに転機が訪れたのですね。

 

2011年の東日本大震災前まで、当ホテルはUDに対応していることをあまり前面に出していませんでした。しかしながら、震災によりお客さんがほとんど来なくなってしまったことで、なんとかしようと思い、UD対応を前面に出すことにしました。

そこで内閣府のバリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰制度に申請したところ、内閣府特命担当大臣表彰優良賞をいただくことができました。これを機に、当ホテルがユニバーサルデザイン対応であることを積極的に宣伝するようになりました。

 

―UD対応を前面に出してからはどのような変化があったのですか?

 

世の中のUDに対しての認知度が上がっていくにつれて、当ホテルもUD対応ホテルとして知名度が上がっていきました。様々な雑誌やTV局から「バリアフリー(ユニバーサルデザイン)に関連した取材」の申し入れも多く、その頻度は年々増えている状況です。 そういった形で知名度が上がると共に、UD客室の稼働率も上がり、現在では一般客室とほぼ同じ水準(年間80%稼働)に達しています。

 

ラウンジ

(湖畔が一望できるラウンジ)

 

「国籍、年代、障害の有無などを越え、誰もが利用できるホテルへ」

 

―UDルームの稼働率が一般客室と同程度までになってきたのはなぜでしょうか?

 

もともとは車いすなどの利用を想定してバリアフリーの設計をしていましたが、バリアフリーのお部屋というのは、スーツケースなど荷物の多い外国人のお客様やベビーカー利用の親子連れのお客様にも利用しやすいとの声をいただいております。そのため、当初想定していなかった客層の利用が増加したことが要因でしょうか。

 

―お客様のニーズ、利用方法は様々ですね。

 

UDルームは部屋に露天風呂が付いている部屋もあり、大浴場に抵抗がある外国人や、大浴場に入ることができない乳幼児も入れるなど、ご好評をいただいています。

 

―食事のユニバーサルデザインにも取り組まれていますよね。

食事も可能なかぎり、お客様のご要望に対応できるように工夫しています。アレルギーや好き嫌いへの対応に加え、食べやすいように食材の切り分け、ミキサー食もご提供しています。

 

 

フロント

(フロントで接客中の従業員)

 

「勤務体系の改革により、従業員にもやさしいホテルに」

 

―最近は勤務体系の改革に取り組まれているとのことですが、具体的にはどのようなものになりますか。

 

ホテルや旅館では、「中抜け勤務」と呼ばれる勤務体系を取っているところが殆どだと思います。

具体的には、朝出勤し朝食の準備・ご提供・片付けをします。 お客様がチェックアウトされたら、清掃を行います。 その後はお客様が館内にいらっしゃらないので「一旦休憩」を入れます(3~4時間程)。 これを「中抜け休憩」と呼びます。 その後、今度は当日のお客様のチェックイン時間に合わせ出勤し直し、お客様のお出迎え~お部屋へのご案内~ご夕食の準備・ご提供・片付けをして一日終了といった形です。

しかしながら、「中抜け勤務」は拘束時間が長く、若い人がホテル旅館で働くことを敬遠する原因にもなっていると思います。

そこでこれらの勤務形態を変更し、1日の勤務を「6時から16時」、「8時から18時」、「12時から22時」の3つのパターンに区分し、「中抜け勤務」をしないで、通しで働くことができる割合を増やしました。

 

―変更により、どのような影響がありましたか?

 

従業員の中でも特に若い人の満足度が上がっていると思います。若い方はスマートフォンの普及により、夜型の生活をする人が多いですし(笑)

 

また、これまではお昼の時間は休憩時間だったのですが、昼から出社する従業員もいるので、ランチの営業ができるようになりました。

 

人件費は増加しますが、多様な働き方を求める従業員に対応し、満足度を上げていければ良いと思っています。

 

 

会議

(全従業員が集まる経営方針大会の様子)

 

「従業員に売上・利益数値も開示するガラス張りの経営」

 

―1年に2回、全館休業日を設定し、従業員に対して経営方針や計画を説明する機会を設けているそうですね。

 

当社は2011年ごろまで、業務の計画やその達成状況の見直しなどのプロセス、いわゆるPDCAサイクルを全く意識していませんでした。製造業では当たり前のように行われていることかもしれませんが。

 

そこで製造業で勤務経験のある2名を企画委員に任命し、"経営方針大会"と称してPDCAサイクルを回す改革に取り組み始めました。現在では、年に2回、全従業員を集めた"経営方針大会"を開催し、私から全社の経営方針や損益数値の発表を行っています。また各部門長から部門ごとに計画、数値目標、達成状況等を発表させています。

 

―従業員にまで売上・利益を開示する企業は珍しいですよね。

 

何も隠さず、ガラス張りの経営を行っています。従業員も会社の現状を理解することで、モチベーションのアップにつながっていけば良いと思っています。

 

―逆に従業員から意見を吸い上げるような仕組みはありますか?

 

2つの方法で、従業員の考えを吸い上げる仕組みを用意しています。

一つは「改善メモ」で、従業員がすでに実施した改善について、事後的に報告してもらっています。もう一つは「気づきメモ」といって、気づいた点及び改善提案事項について、従業員からの意見を吸い上げています。

 

―メモは社長もご覧になるのですか?

 

各部門長がとりまとめを行い、私まで届く仕組みが取られています。全てを採用するわけでありませんが、中には私が全く気にもとめていなかった、あっと思うような内容が盛沢山で、様々な従業員の考えに耳を傾けることの重要性を感じています。

 

 

フレンチレストラン

(新たにオープンしたフランス料理レストラン)

 

レイクビュー

(フランス料理レストランから見える河口湖)

 

  「多様化するお客様に対応するために、フランス料理のレストランをオープン」

 

―昨年フランス料理のレストランをオープンされましたね。

 

これまでは日本料理のみでしたが、お客様の好みも多様化しておりますし、原価管理など、社内の管理体制にも良い影響があると良いと思い、2018年8月より、料理のラインナップにフランス料理を加えました。

銀座「マキシム・ド・パリ」や椿山荘「カメリア」等で総料理長を歴任したフランス人シェフのダニエル・パケ氏を料理長に迎えました。

料理は、地元の食材を使ったものを中心にご提供しています。

シェフも山梨県の食材を気に入ったようで、甲州地鶏の生産現場まで一緒に見に行きました。あらためて料理における食材の大切さを知るとともに、現場まで見に行くというシェフの熱意に関心しました。

 

また、パン作りの職人さんを採用したので、焼き立てのパンを提供できるようになりました。今後は、パンの専門店をホテルの向かいにもオープンすることで、街歩きをしている方や地元の方にも焼き立てのパンを食べていただけるようなお店にしたいと思っています。

 

富士河口湖近辺は、近年インバウンド観光客が大きく増加していますが、富士レークホテルはどうですか?

 

インバウンド観光客の比率は年々上昇しており、現状は全体の20%程度ですので、他のホテルと比べると低いかもしれません。

ただし、あまりインバウンド観光客が増えすぎても、政治や天候等による影響を受ける場合もあるので、日本人観光客とのバランスが重要と考えています。

 

―何かインバウンド観光客向けに特別な対応はしていますか?

 

当ホテルはユニバーサルデザインのホテルという点を活かし、食でもユニバーサルを目指し、ハラール対応の準備をしています。また、2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて、施設・食がユニバーサルデザインである点をPRできれば良いなと思っています。

 

インバウンド観光客に限らず、ホテルに訪れる方全員が、ゆっくりと快適に過ごしていただき、感動いただけるようなホテルを作っていきたいと思っています。

 

社長ラウンジ

(ラウンジでインタビューに答える井出社長)

 

 

 あとがき

富士レークホテルでは、客室や食のUD対応の他、フランス料理への挑戦等、多様化するお客様のニーズに対応し、訪れる人にとって優しいホテルを目指している。一方で、このようなお客様にとって優しいホテルは、不規則な勤務形態をとる必要があるなど、多くの会社では、お客様に優しくあるために、従業員に負担を強いてきているのが現状である。

富士レークホテルは、お客様と従業員の間で、バランスよく双方のニーズを取りいれ、「お客様・従業員の双方にとってやさしい」ホテル作りに努力し続けている。

また、フランス料理に地域の食材を使用するなど、富士レークホテルは、地元ならではの食材を食べたいというお客様のニーズを充足し、旅の満足度を向上させる一方で、地元の生産者等地域にもお金が回る仕組みを整えている。

富士レークホテルの経営には、多様化する観光客の満足度の充足、従業員の働きやすさ、観光客の増加によって地域が潤う仕組みなど、今後の観光にとって必要不可欠な工夫が盛り込まれている。

(公益社団法人 やまなし観光推進機構 ツーリズムビジネス活性化センター 佐藤・大森)

 

 

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施設情報

富士レーク全景

富士レークホテル

山梨県南都留郡富士河口湖町船津 1 番地

電話番号:0555-72-2209

施設の詳細を見る(外部リンク)

 

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