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山梨の神社やお寺には美しい樹々や花など、自然とともに楽しめるところがたくさんあります。また中には美しい天井画などを有しているところもあります。そこを訪れなければ見られない、まるで絵画のような景色や優美な画に出会えるのも、楽しみの一つです。
山梨には、日本三大桜の一つで日本最古の桜といわれ、国の天然記念物に指定されているエドヒガンザクラ、「山高神代桜」が北杜市の実相寺にあります。
甲州市の慈雲寺の境内にそびえるイトザクラは、14mもの高さから地面までしだれ、樹形の美しさは見ごたえがあります。また、満開直前の濃いピンク色をした姿は荘厳華麗です。
桜のほかにも、笛吹市の山梨岡神社は藤の美しい神社として知られています。毎年4月下旬から5月上旬、紫色の藤の花が満開となります。藤棚だけでなく、空に向かっても藤が伸びていて、塔のようにそびえる姿は力強く迫力があります。
寺社の中で出会える美しさもあります。身延山久遠寺の本堂では、黒と金箔で描かれた大きな龍の天井画が見られます。日本画家・加山又造氏による「墨龍」で、一般的に龍の絵はほとんどが玉をもち、爪数は三本ですが、久遠寺の龍は玉を持たず、爪の数も五本あります。それは龍が改心してお釈迦様に宝珠をお返ししたことを表しています。また墨龍はどこから観ても自分と目が合うように感じるのも特徴です。その姿は圧巻で、一瞬にして見るものを魅了します。
身延町の方外院には、140年前に描かれた大絵馬があります。本堂に入ると目に飛び込んでくる「千匹絵馬」は総桐材造りで、横19.42m、縦2.24mの国内でも最大級の絵馬です。江戸時代の安政の飢饉のとき、この神社の信者が豊作を祈願したところ、「馬の霊が飢えて稲を食べてしまっているので、各地から一人一匹の馬を奉納せよ」という悪夢をみたため、絵馬の大額を奉納したそうです。絵馬には数え切れないほど多くの馬が描かれ、それぞれの馬には奉納者の名前が書かれています。
甲府市の武田神社の拝殿の隣にある菱和殿では、色鮮やかな天井画が見られます。山梨県在住の画家渡辺隆次が描いたもので、「甲斐八珍果」をはじめ、山梨県内で見られる草木禽獣やキノコなどの120枚の画で彩られています。このうち4枚は、「風」「林」「火」「山」の文字、2枚は「日輪」「月輪」と称する武田神社御神紋である花菱が描かれています。
※「甲斐八珍果」―——江戸時代に「峡中八珍果」として甲斐の代表的な8種類の果実を総称したもの。ブドウ、ナシ、モモ、カキ、クリ、リンゴ、ザクロ、クルミの8種。