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更新日:2021年3月11日

南アルプス市立美術館~役者浮世絵版画最後の巨匠 名取春仙~

南アルプス市立美術館は、この地出身である役者浮世絵版画最後の巨匠と呼ばれた名取春仙の画業を広めるために建てられた美術館です。1800点以上にもおよぶ春仙の作品や資料を所蔵しており、また同時期に活躍した新版画の作家の作品も所蔵しています。

世界に影響を与えた日本の「浮世絵」

1999年、アメリカの雑誌LIFE誌が発表した「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」。エジソン、コロンブス、ガリレオ、ダ・ヴィンチ、シェイクスピア、ナポレオン等々、歴史にその名を残す錚々たる顔ぶれの中に、日本人として唯一選ばれたのが天才浮世絵師「葛飾北斎」。浮世絵版画は、ヨーロッパの近代絵画に大きな影響を与え、ヨーロッパ美術史の中に「ジャポニズム」というムーブメントを起こしました。
印象派以降の画家で浮世絵の影響を受けていない画家はいないと言われるほど、当時の浮世絵は西洋の画家たちから見て、今までの観念を打ち砕くほど、斬新で衝撃的であったと言われています。

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▲葛飾北斎 『冨嶽三十六景』より「神奈川沖浪裏」

 


ゴッホ、モネ、マネ、セゾンヌなどは浮世絵から画風の影響を受けているとされ、特にゴッホは数千枚の浮世絵を持っており、彼の作品「タンギー爺さん」の背景には沢山の浮世絵が描かれています。浮世絵はゴッホの作風に多大なる影響を与え、ゴッホ自身も日本に強い憧れを抱いていたというのは有名な話です。

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▲フィンセント・ファン・ゴッホ作「タンギー爺さん」

https://www.vangoghmuseum.nl/ja/japanese-prints(外部リンク)
▲オランダにあるゴッホ美術館が公開している、ゴッホが生前コレクションしていた浮世絵の数々。

 

浮世絵の中心であった「役者絵」


西洋において高い評価を受ける浮世絵ですが、江戸時代の日本においては、浮世絵はいわゆる芸術作品としての絵画ではなく、チラシやポスターのような「風俗画」でありました。葛飾北斎、歌川広重の「風景画」、鈴木春信、鳥居清長、喜多川歌麿の「美人画」などもありますが、浮世絵の半数を占めているのは、実は歌舞伎の舞台や当時の人気俳優の姿を描いた「役者絵」です。東洲斎写楽、歌川豊国などが現われ役者絵は最盛期を迎えます。

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▲喜多川歌麿の「美人画」

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▲東洲斎写楽 役者絵「三世大谷鬼次の江戸兵衛」

    
江戸時代の大衆にとってエンターテイメントである「歌舞伎」と、その役者を描く浮世絵は、今でいうプロマイドのような役割をしていました。

しかしながら、明治29年、アメリカから写真版印刷技術がもたらされると、メディアとしての役割を果たしていた浮世絵の需要は極端に減っていき、江戸時代から続く浮世絵文化は、明治30年代頃には終焉を迎えたとされています。

「最後の浮世絵」と言われた大正時代の新版画

歌舞伎人気と相まって、浮世絵の最もポピュラーな画題となった江戸時代の「役者絵」。一方、新版画とは江戸時代の浮世絵を復興させようと大正から昭和時代にかけ発展した木版画です。この頃の浮世絵はメディアとしての役割ではなく、画家が自ら描き、彫り、摺るという、ひとつの作品として画家が創作する西洋絵画に近いものになっていきました。時代に合った芸術を生み出そうと新たな技法を用いて、精緻で美麗な完成度の高い作品が数多く生み出されました。
新版画は「浮世絵のリバイバル」として海外、特に米国において人気を集めていきました。新版画は木版画とは思えない程の写実性と、色彩の豊かさがあり、水彩画と間違えられるほど鮮やかです。

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▲川瀬巴水作「目黒不動堂」

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▲伊藤深水作「三千歳」

マッカーサーや精神分析学者のフロイト、最近ではスティーブ・ジョブズやダイアナ妃といった著名人が、新版画の愛好家として知られています。「最後の浮世絵」と言われた新版画は、日本の伝統的な浮世絵版画の高い技術を受け継ぎながらも、西洋画の視点を取り入れた「新しい木版画」です。

この新版画の作家として、美人画の伊藤深水や風景画の川瀬巴水、そして役者絵の山村耕花などと共に名を連ねていったのが名取春仙です。

名取春仙の画業

春仙は、1886年(明治19年)に山梨県中巨摩郡明穂村(現 南アルプス市小笠原)に生を受け、幼い頃に家業が経営不振に陥り、生後間もなく東京に移り住むこととなりました。東京での生活環境が彼の芸術への関心をより高め、幼少期より絵を描くことを好み、十代の頃よりその才能を発揮していたとされています。彼の作家人生は、役者浮世絵師以外にも日本画や挿絵画家としても名をあげ、その秀でた才能は近年多くの研究者によってこれまで以上に高い評価受けつつあります。また最期は愛娘の眠る菩提悌の前で夫婦心中という悲痛な人生の終え方にも多くの物語を秘めた作家としても知られています。

新版画の役者絵として、山村耕花が面白味のある表情、役者の特徴を誇張して表現することを得意としていることに対して、名取春仙はよりオーソドックスでありリアリズムな表現が主体で、浮世絵の平面性とはちがい、彫刻的で奥行のある表情を得意としていると言われています。

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▲名取春仙 作「五代目市川鬼丸-源氏店のお富」

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▲名取春仙 作「初代中村吉右衛門-馬盥光秀」

 
南アルプス市立美術館では、多くの名取春仙の作品を収蔵しており、新版画の作品展を定期的に開催しています。また名取春仙の作品の常設コーナーも設けております。

最近ではアメリカを中心として再び「新版画」がブームになっています。かつて日本の浮世絵がヨーロッパ近代絵画に大きな影響を与えたように、伝統的浮世絵の表現と西洋のモダニズムを取り入れた新版画が世界的に脚光を浴びる日がくるかもしれません。
役者浮世絵最後の巨匠と呼ばれた名取春仙の作品を観に、ぜひ一度南アルプス市立美術館を訪れてみてください。

 

 

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施設情報

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南アルプス市立美術館

〒400-0306 山梨県南アルプス市小笠原128

電話番号:055-282-6600

開館時間 午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 月曜日、祝日の翌日、年末年始、展示替期間

施設の詳細を見る(外部リンク)
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