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更新日:2022年12月15日

野猿谷ボルダリング

ボルダリングで甲府・黒平を元気に!〈野猿谷ボルダー〉

 甲府市黒平(くろべら)の地域活性化のため、山梨のクライマー3人と黒平地域の住民が連携し、新たに「野猿谷ボルダリングエリア」を公開しました。生活道路の安全確保や自然環境の保護等を維持しながら、楽しくボルダリングができる環境をつくることで、クライマーと地域住民の双方にとって良い効果をもたらすよう、黒平の地域活性化を目指します。(2021年10月取材)

 野猿谷ボルダーの誕生

 東京オリンピック2020で一躍広まり、キッズや若者を中心に人気急上昇中のボルダリング。登山やクライミングにおいて日本屈指の山岳環境である山梨県に、2021年10月新たなボルダリングエリアが誕生しました。その名も「野猿谷ボルダリングエリア」(通称:野猿谷ボルダー)です。観光地として有名な「昇仙峡」のさらに奥、甲府市黒平地区に位置します。豊かな森林に清冽な水、巨石が多く、景観がとても美しい大自然に囲まれた野外のボルダリングエリアです。

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クライマーがボルダリングを楽しむ様子

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仲間とボルダリングを楽しんでいる様子

エリア公開までの道のり

 野猿谷ボルダーを公開するまでには、クライマーと地域住民との対話や草刈り活動を通じた相互理解、そして信頼関係の構築など地道な活動がありました。地域住民への挨拶回りやボルダリングエリアとして公開することに対する地権者への承諾を得ることはもちろん、クライマーによる黒平地区の清掃イベントの実施や黒平自治会の協力による駐車スペースの確保など、訪れるクライマーと地元との交流を通じて公開するに至りました。

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クライマーによる黒平地区の清掃イベント

 

 ボルダリングは、エリアを公開すると県内外の多くのクライマーが訪れるので、充分な駐車スペースや地域住民の理解が重要です。他のエリアでは、クライマーが私有地に無断駐車、あるいは生活道路や林道の路肩などに路上駐車して地域住民の生活に支障をきたし、いざこざに発展、場合によっては登攀禁止になるエリアも少なくありません。野外のボルダリングエリアでは、地元の理解は必須であり、問題が起きては登れません。そこで、野猿谷ボルダーでは、クライマーと地域住民とが良好な関係を保ちながら、黒平地域の地域振興・活性化を目指すため「地域振興協力金制度」を設けました。野猿谷ボルダーを利用するクライマーが黒平地域振興組合へ300円を寄付する制度です。現在では100台以上の駐車スペースが整備されています。

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まずは、マウントピア黒平で受付。
記帳し協力金300円を支払います。

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受付後に駐車します。
黒平自治会の協力で整備された駐車場

 

野猿谷ボルダーの魅力について

 野猿谷ボルダーは、難易度の低い10級から高い4段までの“課題”(登るコースのこと)があり、初心者から上級者まで楽しめるエリアになっています。落ちると川にダイブするウォーターソロ課題や洞窟の中で登る感覚を味わえる課題の他、「ハサマリング」という岩と岩の間に挟まって登る課題など野猿谷ならではの魅力的な課題がたくさんあります。岩質は花崗岩で、河原エリアは川に磨かれてツルツルの岩、山エリアはザラザラの岩と触った感じの違いがあります。また、川沿いで日当たりも良く暖かいので、寒い冬場でも岩を登ることができるのも魅力です。

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 ボルダリングエリアガイド作成のため、"課題"の開拓者と現地確認をしている様子

 

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野猿谷ボルダリングエリアガイド

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登るコースと課題名と難易度が記載されています。

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ウォーターソロ課題「ぬれネズミ(7級)」を登る長谷川氏

 

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「モンキーボーイ(初段)」を登る室井氏

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「モンキーボーイ(初段)」を登る室井氏

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ハサマリング課題 「モンキー&クラブライト(2級)」を登る室井氏

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ハサマリング課題「Shout(初段)」を登る室井氏

 

 野猿谷ボルダーを公開につなげた3人のクライマーの熱い思い

 野猿谷ボルダーを一つのエリアとして立ち上げ公開するため、地元の有志3人のクライマーにより、野猿谷クライミングクラブ(通称:YCC)が設立されました。代表の長谷川裕弥さんは、このエリアを公開するあたり、「単純に自分がボルダリングを楽しむだけでなく、皆で登ってボルダリングの楽しみを共有すること、全国から来てもらえて良かったと思えることが、クライミングを楽しむための本質だと気づきました。ただ、岩を登るだけでなく、地域住民にクライミングを理解してもらい、連携してボルダリングができる環境づくりをすることが大切だと思いました。」と語ってくれました。
 室井登喜男さんは、日本のボルダリングエリアとして有名な瑞牆山や小川山をはじめ、御岳(東京都)にあるボルダーのほとんどの課題を開拓してきた日本クライマー界のレジェンドです。「こんなに素晴らしい岩があるなら、いろいろな人に登ってもらいたい。共有したい。そして、黒平を元気にしたい。クライミングは自己満足だと思うが、自分だけでなく共有することでクライミングが文化になる。」と語ってくれました。
 中島光紘さんは、大学で地質学を専攻するほどの大の岩好き。「野猿谷には500以上もの課題があり、公開することで様々な人に登ってもらえる。岩が野に帰らず(課題に苔が生えたりして登れなくなること)、この素晴らしい資源が受け継がれていって欲しい。」と語ってくれました。

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 YCCメンバー 中島氏(左)、長谷川氏(真ん中)、室井氏(右)

黒平在住の藤原さんの思い

 黒平地域振興組合会長で黒平地区の自治会長でもある藤原一郎さん。YCCのメンバーからボルダリングによる地域活性化の提案をされた時、「スポーツで若い人達が盛り上がってくれるのはとても嬉しいこと。地元からするとただの石なので棚からぼたもち的な話。」と好意的に提案を受け取りました。黒平では、味噌やほうとう作り、音楽イベントなど手掛けてきたけども、情報発信力や誘客能力は、やはり若い人たちがとても上手。1年間、ボルダリングをする若者を見てきたが、とても礼儀正しく移住してもらいたいと思うくらいな若者が多かった。都会から来て、大自然の中で遊んで楽しんでもらい、黒平の食、文化、歴史などの魅力を知ってもらえれば嬉しいと笑顔で語ってくれました。

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藤原一郎氏(黒平地域振興組合会長、黒平地区自治会長) 

黒平地域の今後の展望や将来について

 2020年10月に野猿谷ボルダーがプレ公開されてからこれまでに延べ1,000人以上のクライマーが訪れ、寄付金は30万円に達しました。また、近隣の宿泊施設「マウントピア黒平」や飲食店「藤原庵」にもクライマーのお客さんが訪れるようになり、徐々に公開した成果が見られています。寄付金は、定期的な草刈り活動や集会場の改修など黒平の地域振興に充てたいとのことです。
 一方で、黒平地区は住人の高齢化が進み、世代交代が課題となっています。YCCや藤原さんは、野猿谷ボルダーの公開により、県内外から多くの若者がこの地に訪れ、ボルダリングや清掃イベントなど交流する機会を通じて、黒平が元気になるとともに、様々な可能性や展望が拓けることを期待しているとのことです。

 

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左から藤原氏、中島氏、長谷川氏、室井氏

 

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藤原庵
「おもてなしは『自然』です」

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藤原庵のほうとう
自家製味噌で作り、具だくさんです。

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黒平特産のさしみこんにゃく(左)
岩茸(右上)    花豆(右下)

 取材後記

 YCCメンバーに「なぜ、岩に登るのか?」と訊ねてみました。皆さん口を揃えて難しい質問ですね・・・と苦笑い。「楽しいから、だよね。」、「自己実現?」、「できなかったものができたときの喜び、達成感」、「見たことのない岩を登る楽しみ」「体験したことのない緊張感を感じる楽しみ」「自然が創造した作品を登る楽しみ」「人は変わるけど、岩は変わらずそこにあり、自然を感じられる」など深い言葉もありました。「岩」を「登る」ことは、言葉では言い表し難い魅力があり、向上心やチャレンジ精神のようなものがあると思いました。筆者も初めて野外でのボルダリングを体験しましたが、大自然の中で木漏れ日を浴びながら岩を登ることが、まるで自然に帰ったかのように純粋に楽しく感じました。
 ※ボルダリングは危険を伴うスポーツです。まずは、ボルダリングジムである程度の基礎を身につけてから、経験者と野外でのボルダリングを楽しむことをオススメします。

(取材・文:小川)

 

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