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更新日:2021年4月6日
山梨県の北西部に位置する韮崎市と北杜市は、甲斐駒ケ岳や八ヶ岳、世界遺産でもある富士山をぐるりと見渡せる美しい山岳景観が魅力のエリアです。首都圏から車で約2時間の好アクセスということもあり、年間多くの観光客が訪れる人気の場所。ここでは、車いすやベビーカーでも訪れやすい韮崎市と北杜市のバリアフリースポットを、実際の車いすユーザーの視点からご紹介します。
目次
まず訪れたのは、中央自動車道・韮崎ICから車で約15分、JR中央本線・韮崎駅からタクシーまたはバスで約10分のところに位置する「韮崎大村美術館」です。こちらの美術館は、韮崎市出身で、2015年に「線虫感染症の新しい治療法の発見」によりノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智氏が館長を務めていることでも知られています。研究者として名高い大村博士ですが、芸術との繋がりも非常に強く、長きに渡り女子美術大学と関わりを持ちながら、現在は名誉理事長にも就任されています。そんな縁もあって大村美術館は、全国でもあまり例を見ない女性美術家による作品の展示が多いことが特色です。
▲2007年、大村博士の生家のすぐ近くに私設美術館として開館しました。現在は、韮崎市に寄贈されています。
▲駐車場も広くて駐車がしやすいです。車いすの乗降も問題ありません。
40年以上かけて大村博士が蒐集してきた美術品を軸に、女性美術家の作品、日本近代の洋画家・鈴木信太郎の作品、日本の民藝運動を伝える陶磁器作品などが常設される他、年4回の企画展も開催されています。訪れたこの日は、企画展「花たおやかに咲く」という春の訪れを感じられる印象的な作品展示を楽しむことができました。
▲2021年春(〜2021.05.30まで)に開催されている企画展「花たおやかに咲く」。
年に4回こうした企画展が開催されます。
館内には、大村博士がノーベル賞を受賞した記念として開設された大村智記念室もあります。科学者としてノーベル賞受賞に至るまでの道のりや個人の美術コレクション、過去の功績などにも触れることができます。
▲「大村智記念室」では、大村博士の意外な一面も覗けるかも?!
1階の展示フロアは、フラットな空間で車いすユーザーでも過ごしやすい環境。大村博士が蒐集を続けてきた日本近代の洋画家・鈴木信太郎の作品や素晴らしい眺めが一望できる展望室は美術館2階のフロアです。もちろんエレベーターがあるので安心なのですが、1〜2人用のエレベーターのため、大きなサイズの車いすは乗降できない可能性があります。電動車いすユーザーなどは、事前に問い合わせることをおすすめします。
▲モデルの女性は電動車いすユーザー。そんな彼女がなんとか乗降できるサイズのエレベーターです。
▲2階エレベーター付近の空間もコンパクトなので怪我をしないようにゆっくりと進みましょう
▲2階にある展望室の様子。目の前には壮大な景色が広がっています。部屋の中心に並ぶ陶芸作品や郷土作家の作品も見どころ。展示を楽しんだ後は、室内に設置されている自動販売機で購入したコーヒーやお茶をこの場所で飲みながらゆっくり過ごされる人も多いそう
▲窓の向こうに広がる美しい風景はまるで絵画のよう
美術館最後の楽しみと言えば、ミュージアムショップです。所蔵品をモチーフにしたグッズやこの美術館オリジナルのものまで幅広く並びます。企画展開催期間中の限定商品もあるので、いつ訪れても新鮮な気持ちで楽しめるでしょう。
▲自宅用にはもちろん、お土産にもぴったり!
▲美術館オリジナルグッズも種類豊富に並びます
「韮崎大村美術館オリジナル MEMO文庫」 400円(税込)
▲多目的トイレ完備。おむつ交換台等は設置されていません
時が経つのを忘れてしまう不思議な心地良さを感じる韮崎大村美術館。大きすぎないコンパクトなサイズ感が、車いすユーザーのみならずファミリーにもピッタリ。忙しい日常を忘れ、ホッと一息つきたい時にゆるりと訪れてみてください。
4月〜10月 10:00〜18:00
11月〜3月 10:00〜17:00
(入館は閉館の30分前まで)
休館日:水曜日(年末年始・展示替えなどによる臨時休館日有)
観覧料:一般500円(420円)/小・中・高生200円(160円)
※韮崎市内に在住・在学の小中高校生は無料 ※( )内は20名以上の団体料金
※障害者手帳をご持参の方はご本人と介護の方1名無料
次に訪れたのは、韮崎大村美術館から国道20号線を車で走ること約25分、日本名水百選に選ばれている尾白川渓谷の入り口、甲斐駒ケ岳の登山口に位置する「道の駅はくしゅう」です。ここは、清らかな水が流れる地で育った新鮮な季節野菜やお米、地酒や加工品などが販売されているファーマーズマーケットの他、食堂やカフェコーナーが併設された県内でも有数の道の駅です。
▲白州町の中心にある道の駅はくしゅう
▲建物に入るまでの道のりは石畳のスロープです。車いすやベビーカーでも大丈夫ですが、少し距離があるので気をつけて進んでください
館内に入るとすぐ左手にファーマーズマーケットがあります。地元の農家さんから毎朝届けられる野菜は新鮮そのもの。中には、スーパーでもあまり見かけない珍しい野菜が並ぶことも。焼きたてのパンやお惣菜、玉子や味噌、銘酒や銘菓など、白州町の物はここに来れば何でも揃うと言っても過言ではありません。
野菜やフルーツは、午前中に無くなってしまう場合もあるので早めの時間帯に訪れることをおすすめします。
▲高い天井が目を惹く、根強い人気のファーマーズマーケット
▲訪れたこの日は、女性に大人気のビーツも並んでいました
▲玉子だけでこんなに種類があるの?!どれにしようか迷ってしまいます
▲銘酒や銘菓も並んでいるのが嬉しい
▲通常ではなかなか手に入らない貴重な商品が並ぶこともあるそう
▲広いので車いすユーザーも過ごしやすい空間
併設されている『かもしか食堂』は、新鮮野菜を贅沢に使った「地野菜たっぷりタンメン」や「はくしゅう野菜カレー」など、ここでしか味わえないメニューが人気です。その他、うどんや蕎麦、定食といった定番の食堂メニューも並びます。
▲ファーマーズマーケットすぐ隣には「かもしか食堂」があります
▲優しい日が差す開放的な店内
そして、この道の駅で最も押さえておきたいポイントは、24時間汲むことができる天然名水コーナーがあるということです。キンと冷えた口当たりまろやかな白州の天然水を求めて連日県内外から多くの人々が訪れます。ペットボトルや水筒などの容器を持参してぜひその味をお楽しみください。万が一容器を忘れてしまった場合でも安心!ファーマーズマーケットにて容器を購入することも可能です。皆でワイワイしながら水汲みを楽しむのも旅の思い出の一つになりそうです。
▲天然名水ってこんなに冷たいの?!と驚く人も少なくありません
▲天然名水の汲み口は3つ。マナーを守って綺麗に使いましょう
▲足場が悪いので車いすやベビーカーですぐ近くまで行くのは少し難しそうです
▲多目的トイレは、館内と屋外の両方に設置されていて便利です
▲屋外の多目的トイレ。子ども用おむつ交換台有。トイレ目の前に思いやり駐車場2台有
野菜や加工品、お菓子やお米など、様々な商品が並んでいる様子を見ると楽しくなってついつい買い過ぎてしまいそうです。興奮の後は、美味しいお水を味わいながら大自然の中でゆっくりと深呼吸するのはいかがでしょうか。清流と緑の故郷、道の駅はくしゅうは、訪れる人々にきっと最高の思い出を残してくれるはずです。
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施設情報
道の駅はくしゅう 山梨県北杜市白州町白須1308 電話番号:0551-20-4711 9:00〜 ※閉館時間は季節によって変動有。お問い合わせください 定休日:4月〜11月 無休 (冬季は、毎週水曜日)・年末年始 |
この旅の最後に紹介するのは、道の駅はくしゅうから車で約20分、2018年に北杜市小淵沢町にオープンした「ハーベストテラス八ヶ岳」です。目の前にある広大な畑で収穫されたフレッシュ野菜をメインに地産地消にこだわった料理が自慢のレストラン。それだけではなく、季節の収穫体験イベントや不定期のカルチャーイベントも開催している自然と暮らしの融合を提案する今までにない新しいスタイルのレストランです。
▲自然の中に突如現れるスタイリッシュなレストラン
▲駐車場も広く、店舗の目の前が思いやり駐車スペースになっています
▲駐車場からお店に入るまではスロープがあるので安心です
▲店内は木の温もりのある明るい空間
▲キッチンの様子も見えて活気が感じられます
人気のランチメニューは、「ハーベストプレート(スープ、ドリンク付)1,680円」。自家農園で収穫された季節の野菜やハーブ、フルーツを使った贅沢なひと皿。この日は、ワインビーフのハッシュドビーフ、自家農園白菜とりんごのクリームチーズ和え、自家農園さつまいもジャーマンポテト風、ビーツとくるみのラペなど、数種の副菜とライス、野菜スープを堪能しました。プレートの内容は、収穫状況で変わるので訪れる度に違う料理を楽しめるのも嬉しいポイントです。
▲一番人気のランチメニュー「ハーベストプレート」。手間をかけた丁寧な野菜料理が味わえるのが魅力。ボリュームもたっぷり!
▲素晴らしいロケーションと美味しい料理に笑顔がこぼれます
その他、本日のパスタや甲州ワインビーフのハンバーグ、自家製カレーやキッチン内にある石窯で焼く本格ピザなど、大人も子どもも大好きなメニューが脇を固めます。
▲広大な畑と甲斐駒ケ岳が一望できる素晴らしいロケーションです
▲トイレも広くて便利。しかし、入るまでの空間が少し狭いことと、トイレ内に手すりがないため、
車いすユーザーは介助が必要な人も多いかもしれません。おむつ交換台は設置されていません
「自分だったらこんなお店に行ってみたい…」オーナーのそんな想いから歩みだしたこのレストランは、障がい者の人々との繋がりを育みたいという願いも一つあるそう。そんな想いが細部にまで感じられる誰にでも優しいレストランです。暖かな季節は、絶好のロケーションと心地よい風を感じながらテラス席で過ごすのも良いでしょう。わざわざ訪れる価値のある行列必須の人気レストランです。収穫体験や各種イベントの詳細については、HPまたはSNSにて確認してみてくださいね。
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施設情報
体験型農園レストラン ハーベストテラス八ヶ岳 山梨県北杜市小淵沢町4869-1 電話番号:0551-36-8100 ランチ 11:00〜15:00(L.O.14:00) カフェ 14:00〜17:00(L.O.16:30) ディナー 17:30〜21:00(L.O.20:00) 定休日:水曜日 |
今回ご紹介した車いすユーザーの視点から伝える韮崎市・北杜市の旅はいかがでしたでしょうか?車いすで初めての場所へ出かけるのは非常に勇気がいるものです。「自然=でこぼこの道」、そんなイメージが強いかと思いますが、近年、自然豊かなここ山梨でも車いすで楽しめるスポットが少しずつ増えてきました。ぜひ思い出に残る韮崎市・北杜市の旅をお楽しみくださいね。
案内人 田中 千晶
プロフィール
34歳のある日、原因不明の病で手足に麻痺が残り車いす生活に。
現在、自身の経験を生かし各地で講演活動などを行う。山梨県ボッチャ協会副会長。
取材・文/anko編集部