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更新日:2022年3月15日
山梨県立美術館の所蔵作品を代表するジャン=フランソワ・ミレーの《種をまく人》の「クローン文化財」が、3月15日からコレクション企画展にて公開されています。
クローン文化財って、聞き慣れない言葉ですよね。クローン文化財って何なのか。本展の見どころや今後の可能性についてご紹介します。
今回制作された《種をまく人》のクローン文化財は、山梨県立美術館にて昨年度撮影された超高精細画像(10,000dpiでデジタル化され約1,350億画素)をもとに、東京藝術大学が手掛ける最新の3Dデジタル技術によって、額縁や絵画表面の凹凸まで精密に再現されています。
クローン文化財と本物が並んで展示されるのは本邦初!
まずは、キャプションを見る前に、どちらが本物(オリジナル)か見比べてみてください。
答えを言ってしまうと、オリジナルは作品の保護のためにガラスがはめ込まれているので、照明の反射が見えます。
クローン文化財にはガラスが無いので、ガラスを取った時、どう見えるのかというのも楽しめる趣向になっています。
ガラスがあると色味が変わってしまうため、クローン文化財では本来の豊かな色彩を見ることができます。
制作の工程で、本来の色味になるよう、大型インクジェットプリンターを展示室に持ち込んで出力し、オリジナルと見比べながら何回もテストを行い、忠実に色調を再現したそうです。
「3D技術により再現した絵画表面の凹凸形状」
《種をまく人》のクローンは、ミレーの描いた筆のタッチまで忠実に再現されています。
絵画表面の凹凸形状を、高精細3Dスキャナーで読み取り、3Dデジタル化したデータをもとに凹凸を再現したキャンバスを作成します。
今回新たな試みとして、従来は手作業で行っていた凹凸の再現工程を、3Dデジタル技術を活用したことで、オリジナルの質感により迫るものになっています。
このキャンバスに、オリジナルの色調再現したデジタルデータが大型インクジェットプリンターで印刷されます。
各制作工程は、パネルでくわしく紹介されていますので興味のある方はぜひご覧ください。
絵が動き出す「変幻灯」
実際の様子は動画でご覧ください!
同じ展示室内に紹介されている「変幻灯」。
絵画に光のパターンを投影することで、止まった画像が動いて見えるという新しい視覚体験ができます。オリジナルでは作品保護のため不可能なことも、クローン文化財なら可能となります。
公開が困難な作品をクローンで公開したり、移動美術館や学校での展示、目の不自由な方に触って体験してもらったりと、今後、様々な活用が期待されます。
調査から完成まで約半年かけて作成されたクローン文化財は、最先端のデジタル技術と、専門的な知識をもった人のアナログ技術との融合作品です。
今まで《種をまく人》を見たことがある方も、改めてオリジナルとクローン文化財をじっくり鑑賞することで、新たな発見があるかもしれません。
普段は撮影不可ですが、今回はオリジナル作品も写真撮影をすることができます。
この機会にぜひ、オリジナルの魅力とともに新しい鑑賞体験を味わってみませんか?