登山シーズン到来！富士山開山を告げる悠久の祭り

登山者の安全を祈願。力強く開山を告げる「お道開き」【開山前夜祭】

富士山の山開きを控えた6月30日、吉田口登山道の起点である「北口本宮冨士浅間神社」（以下、「神社」と言う。）において、富士山開山前夜祭が行われました。

まず、富士山頂に続く登山道の初めの門である金鳥居（かなどりい）前の金鳥居市民公園に、富士講や山伏、御師、神社の氏子総代などが集合。神職からのお祓いなどのセレモニーからスタートします。

セレモニー後は、神社まで行進。富士講の“かけ念仏”を聴きながら御師町を練り歩き、富士山信仰の悠久の歴史へと思いを馳せます。

神社へ到着すると、神事が始まります。まずは前夜祭神事に先立ち、けがれを払う儀式「夏越大祓（なごしおおはらえ）」。神社関係者や地元住民の方々が、境内に設置された高さ約2.5メートルの茅の輪をくぐり、罪やけがれを祓います。

 

罪やけがれを払う神事「茅の輪くぐり」

厳かな「太々神楽奉奏」が参列者を迎えます

続いて前夜祭神事。社殿において玉串の奉納等が行われ、登山者の安全を祈願した後、いよいよ本日のクライマックスへ。登山道入口の鳥居に張られたしめ縄を、神話に登場する神「手力男命（たぢからおのみこと）」が木槌で断つ「お道開き」。勢い良くしめ縄が断ち切られると同時に、大きな歓声と拍手が沸き起こり、富士山の開山が告げられます。

手力男命による「お道開き」

富士山への感謝と開山のご奉告【開山祭】

山開き当日の7月1日、神社では開山祭の神事が厳かに執り行われます。御神楽の奉納後、富士山と関わりの深い方々が拝殿へ上がり神事が行われ、富士山への感謝や開山のご奉告がなされ、富士登山者や登山道関係者の安全を祈願します。

なお、開山祭後は神社裏手にある大塚丘において、お境参りが行われます。開山祭が無事に終了したことを報告し、富士講によるお焚き上げも行われます。

～「冨士山小御嶽神社」の開山祭～

富士山5合目にある、冨士山小御嶽神社（ふじさんこみたけじんじゃ）においても開山祭が行われます。5合目周辺は、「天狗の庭」と呼ばれ、天狗が支配していたという言い伝えがあります。そのため、小御嶽神社では天狗が祀られており、7月1日の開山祭では大天狗・小天狗がしめ縄を断ち切る「お道開き」が行われます。

大天狗と小天狗による「お道開き」

この日は好天に恵まれ、壮麗な富士が姿を現す

富士山信仰のロマンに触れて

かつて、富士山を信仰の対象とする富士講や御師などにとって、この開山前夜祭・開山祭は夏の訪れを告げる節目の祭事でした。時代とともに富士講は衰退したとはいえ、その伝統を継承し、独自の富士登山スタイルを守り継いできました。富士山が2013年に世界文化遺産に登録された理由も、この富士山信仰の文化があってこそ。この2日間にわたる祭りは、富士山が信仰の対象であり、多くの人々から崇められてきた深い歴史を肌で感じることができます。

遥か昔から、人々を魅了してやまない富士山。ぜひ皆さんも、御師の家への宿泊や神社からの富士登山など、富士山に縁のある地を訪れ、レジャーとしての富士登山だけではない、富士山信仰のロマンを感じてみてはいかがでしょう。

取材・文/清水愛

 

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