ここから本文です。
更新日:2021年10月1日
急に気温が冷え込み秋の深まりを感じる今日。秋と言えば、、、芸術の秋も楽しみの1つ。現在、山梨県立美術館で開催中の「新版画展―笠松紫浪を中心に―」(10月24日(日)まで)。近年ブームになっていると言われる大正時代から昭和前期の“新版画”ですが、本展では、国内外で最大のコレクションを誇る笠松紫浪の作品をはじめ、橋口五葉や川瀬巴水、吉田博、名取春仙などの名品が一堂に会すまたとないチャンス。新版画展の様子を紹介します。
「新版画」とは、江戸時代の浮世絵版画を復活させるために大正から昭和前期にかけて、絵師、彫師、摺師の分業体制によって制作された木版画のことをいいます。橋口五葉や伊東深水の美人画、川瀬巴水や吉田博の風景画、名取春仙の役者絵などで人気を得ました。
版元の渡邊庄三郎が提唱し、新版画は海外に向けて売り出され、「Shin-hanga」として海外のコレクターに高い評価を受けるも第二次世界大戦により新版画のブームは過ぎ去り、新たな創作の時代へと変わっていきます。
橋口五葉《髪梳ける女》1920年 山梨県立美術館蔵
名取春仙《初代中村吉右衛門 馬盥 光秀》1925年山梨県立美術館蔵
現・南アルプス市出身の名取春仙の役者絵も必見
川瀬巴水《増上寺之雪》1953年 山梨県立美術館蔵
吉田博《富士拾景 河口湖》1926年 河口湖美術館蔵
多くの富士山の風景を描いている川瀬巴水
様々な表情で描かれる富士山を楽しめます
本展の目玉となる笠松紫浪は、“最後の新版画家”と呼ばれ昭和30年代頃まで風景画家として活躍し、
創作版画の特徴である下絵の作成・彫り・摺りのすべてをひとりで行う「自刻自摺」を習得。精力的に版画を制作し続けました。
笠松紫浪《浅草観音堂大提灯》1934年山梨県立美術館蔵
笠松紫浪《東京タワー》1959年 山梨県立美術館蔵
山梨県立美術館は、全国の美術館で随一の笠松紫浪作品の質と量を誇り、本展では、100点を超える作品が展示がされています。淡い色彩の繊細な色の重なりや、どこか懐かしさを感じる風景に惹きつけられます。
著名な寺社や、風情ある温泉地の風景を見ていると自分も旅行をしたような気分に浸ることができます。
一部の作品を除き、写真撮影も可能なので、お気に入りの作品をカメラやスマホに収めてみては。
笠松紫浪《ふくろう》1957年 山梨県立美術館蔵
《ふくろう》の版木。1つの版木の表裏で2回刷り
4つあるので全部で8回刷りで制作されている
笠松紫浪のスケッチ類
近年人気の高まる「新版画」の魅力をぜひご覧ください。
また、併設のレストランでは、「新版画―笠松紫浪を中心に―」特別展メニューを提供しています。
詳細はこちら。