ここから本文です。

更新日:2018年8月2日

富士講ゆかりの巡礼地を巡ろう!!

富士山が未来に受け継ぐべき世界の宝として世界文化遺産に登録されて、平成30年6月22日で5周年を迎えました!日本が誇る富士山は世界中の人々を魅了し、連日たくさんの人が富士山を訪れています。絵画や文学の題材となってきた美しい姿や雄大な自然はもちろん、ここにしかない独自の文化など、富士山には知れば知るほど惹かれてしまう魅力がいっぱい‼今年の夏休みは家族そろって“富士山を満喫する旅”に出かけてみませんか?夏休みの自由研究のヒントや、富士山の歴史や文化を感じられるおすすめの散策スポットなど、富士山をもっと知って、歩いて、感じて、まるごと楽しむ情報を3回にわたって紹介します。
第3回目は、富士講の人々が歩いた巡礼地について紹介します。
富士講の人々は富士山の登拝だけでなく、富士五湖や忍野八海などの巡礼地で、巡礼や水行なども行っていました。巡礼には富士山の火口をぐるっと一周する「お鉢巡り」、富士山五合目あたりを水平方向に一周する「御中道巡り」、富士五湖をはじめとする富士山周辺の八つの湖で水行する「内八海巡り」などがあります。また内八海巡りの巡拝行を集約するように忍野村の八つの池で水行を行うようになったのが「忍野八海巡り」です。いにしえに思いを馳せながら、富士講の人々が歩いた巡礼地をたどってみましょう。

目次

御中道トレッキングコースを行こう!

御中道は富士講が修行として歩いていた、富士山の五合目付近の山腹を時計回りに一周する約25kmの古道です。途中には険しい谷などの難所も多く、「富士山に3回登った経験のある人しか御中道は巡ることは許されなかった」というほどの大行だったそうです。
現在は大沢崩れという大きな谷が少しずつ崩壊していて通れないため、富士スバルライン五合目から御庭までの約2.5kmのコースになっていて、ほぼ平地を歩くので気軽に楽しむことができます。五合目周辺ならではの動植物や美しい景色、地質や地形、また森林限界など、富士山ならではの自然を肌で感じることができるのが魅力です。富士山五合目自然解説をしてくれる無料ガイドさん(事前に申し込みが必要です)に案内してもらいながら歩くのがおすすめです。

五合目から御庭までの往復は約2時間の行程!

道はしっかり整備されていて歩きやすい

ガイドさんと一緒に富士山の自然の中へ!

御中道を歩き出すと、まず感じるのが森の緑の香りです。歩みを進めるたびに香りも変わっていき、緑に包まれているような心地よさです。耳をすますと鳥たちの鳴き声もします。ルリビタキやメボソムシクイなど、さまざまな美しい声があちこちから聞こえてきます。
ガイドをしてくださった棚木元さんによると、富士山五合目には日向を好む陽樹と日陰を好む陰樹があるそうで、御中道に入ってすぐはカラマツ、タケカンバなどの陽樹とシラビソ、コメツガなどの陰樹の森が広がっています。
道の脇にはシャクナゲも群生していて、7月中旬の見頃の時季には白や淡いピンクの花が咲き誇るそうです。また8月下旬ごろからはコケモモが一斉に赤い実をつけ、辺り一面が真っ赤な絨毯に!「富士山ほどコケモモが多いところはあまりないと言われています。とても美しい光景ですよ」とガイドさんも一押しです。
しばらく行くと、木々の様子が変わり、枝を斜めに伸ばして寝転がっているような面白い姿の木がたくさん見られます。これはタケカンバの林で、冬に雪の重さでこんなスタイルなったそうです。でも折れずに生き延びているところがタケカンバのすごいところです。

ガイドさんと歩くと発見がいっぱい!

左:白くかわいい花を咲かせるコケモモ
右:鮮やかなピンク色の花を咲かせるシャクナゲ

目の前にそびえる堂々とした富士山

さらに進むと、一気に開けたところに出ました。目の前に大きな富士山がどんとそびえています。またここから麓の方を見下ろすと、河口湖、精進湖、本栖湖、さらに青木ヶ原樹海、その向こうには南アルプスまで見えるそうですが、残念ながらこの日は霧が多くて見ることができませんでした。でも間近で見る富士山は麓で見るのとはまた違い、その堂々とした姿にあらためて見惚れてしまいました。

旗型樹形。風がどちらから吹いているかがよくわかる!

富士山に夢中になっていると、「この辺りの木をみてください。ちょっと変な形でしょう」とガイドさん。確かにカラマツの葉が山頂側には全くなく、麓側にだけあって、まるで髪が風になびいているみたいです。この辺りの強い偏西風と雪が吹き付ける西側だけが枯れてしまうそうで、「旗型樹形」といわれているそうです。
また周りには上から押さえつけられたような背の低い木もあります。雪が上に降り積もり、雪に閉じ込められた内部は比較的暖かいので生きていられますが、雪より上に出ている部分は枯れてしまい、「テーブル型樹形」になったそうです。

森林限界で踏ん張る献身的な植物も

さらに進んで行くと植物も少なくなり、景色がすっかり変わります。森林限界です。森林限界は年に40cmほど上がっていて、今は2,800mぐらいが限界だそうです。歩いている地面も溶岩に変わっていて、真っ黒で穴がたくさん開いている軽石のような石は、玄武岩質のスコリアと呼ばれる火山噴出物です。
そんな環境の中でもがんばっている植物もあります。山肌にぴったりと張り付くように丸く生えている緑です。これはオンタデなどがパッチ状に生えたもので、遮るもののないこの環境でもがんばって生き延びることができるそうです。
パッチの周辺は地面が安定化し、そこにカラマツの芽が飛んで来て、パッチに守られながら成長していくそうです。「パッチは木を守り育てるので、ナースプラントと呼ばれています」とガイドさん。パッチの献身的な生き方に脱帽です。

視界が開け、森林限界が手に取るようにわかります

自然の力は想像以上にすごい!

火口列や溶岩流など富士山の荒々しさも

溶岩が流れた跡は、富士山の歴史を感じます

歩みを進めていくと、御中道で唯一見ることができる、溶岩が流れた跡が見えました。富士山のかつての荒々しい姿を想像することができます。さらにそこから少し歩くと、ゴールの御庭に到着です。御庭にはかつて割れ目噴火が発生した火口列があり、ダイナミックな富士山を感じることができました。

内八海巡りとは?

「富士講」は富士山登拝、御中道周拝とともに、富士山を取り巻く八つの湖も巡礼していました。これが内八海巡りです。内八海は泉瑞(せんずい)、山中湖、明見湖、河口湖、西湖、精進湖、本栖湖、四尾連湖(しびれこ)の八つの湖で、この順番に巡礼を行っていたといわれています。泉瑞は時代によっては須戸湖とされていることもあります。
また富士山の外側にある水の聖地を巡る外八海巡りもあり、外八海は琵琶湖、二見浦、箱根湖(芦ノ湖)、諏訪湖、中禅寺湖、榛名湖、桜池、鹿島海(霞ヶ浦)とされています。

泉瑞へ!明見湖へ!四尾連湖へ!行ってみよう

泉瑞は富士山の裾野にある湧水地です。林の中を抜けた先に、ひっそりとあります。源頼朝が富士北麓で狩りをしていた時、のどを潤そうと神に祈って岩をムチで打ったところ、水が湧きだしてきたという伝説があります。古くから浅間神社の神水として引水されていましたが、現在は上水道引水のため覆石してあり、残念ながら湧水の様子を見ることはできません。
明見湖は縄文時代に富士山の溶岩が辺りの川をせき止めてできたせき止め湖と考えられています。かつては山中湖へ行くための峠越えのルート状にあり、江戸時代には富士講の多くが富士登拝後に訪れて、ここで水行をしたそうです。今は湖面には蓮が群生していて、蓮池とも呼ばれています。
四尾連湖は市川三郷町にある、周囲1.2kmの山上湖です。雨乞い伝説を伝える神秘的な湖で、四尾連湖の神が「尾崎龍王」という龍神であり、四つの尾を連ねた竜が住んでいる湖ということで「四尾連湖」となったと伝えられています。最近では、女子高校生が山梨県内などでキャンプを楽しむ姿を描いた漫画とアニメ「ゆるキャン△」にキャンプ地として「四尾連湖」がでており、聖地巡礼の一つとしてファンが訪れています。

泉瑞での富士講の巡礼の様子

四尾連湖での富士講の巡礼の様子

忍野八海を歩いてみよう!

忍野八海は富士山の伏流水に水源を発するといわれる八つの湧水池で、出口池、お釜池、濁池、鏡池、菖蒲池、底抜池、銚子池の八つからなります。外八海、内八海とともに、富士講信者の巡礼地である八海巡りの「元八海」として、多くの富士講信者が訪れました。昔から水には浄める霊力があり、身心のけがれを払うと信じられていて、信者は忍野八海の水を浴びて身を清める水行をしました。

八海の中で最も大きい「出口池」

他の池とは少し離れていますが、この雰囲気は行ってみる価値があります

忍野八海は北に七つ、南の少し離れたところに1つあり、八つの池は北極星と北斗七星の形を表しているといわれ、出口池が北極星とされています。ほかの7つの池は底から水が湧き出ていますが、出口池は池を囲む溶岩塊の下から水が湧き出ていて、桂川の水源の一つになっています。木々に囲まれた出口池はとても静かで、神秘的な雰囲気に包まれています。

忍野八海一の湧水量を誇る「湧池」

深さを目で確認できるほど水が透き通っています

忍野八海を代表する池で、橋の下から奥には水中洞窟があり、そこから水が湧き出ています。かつては水面が20cmぐらい盛り上がるほどの水が湧いていたそうで、富士講の信者からの人気も一番高かったそうです。すり鉢状になっていて、深いところは約4mあり、「セキショウモ」が水中で美しく揺れています。1983年には宇宙で雪を作る実験に、この湧池の水が使われました。

富士の姿を映し出す「鏡池」

条件が整えば見事な逆さ富士を見ることができます

富士山の姿が鏡のように水面に映ることから、鏡池と呼ばれています。古くは鰶池(このしろいけ)とも呼ばれていました。この池はすべてのことの善悪を見分ける霊力があるという伝説があります。

「巡拝行」をテーマに自由研究をしてみよう!

富士山五合目で見られる動植物は?地形や地質はどうなっているの?

富士山は生きた自然の博物館です。眺めるだけで、登るだけではもったいない。魅力いっぱいの富士山を感じてみませんか。富士山五合目自然解説を利用し、五合目ならではの木々や花、鳥、地質、地形などを肌で感じ、どんな種類があるのか、どんなふうになっているのか実際に歩いて調べてみましょう。今回ご紹介した御中道コースの他にもコースがございます。

9月になると真っ赤な実がなるコケモモ

忍野八海に伝わる民話や言い伝えについて調べてみよう

忍野八海の八つの池にはそれぞれ、名前の由来にかかわる歴史や伝説などが残されています。「ふるさと忍野案内人」にガイドしてもらいながら、忍野八海の言い伝えなどを調べてみましょう。「ふるさと忍野案内人」はガイド実施日の6日前までに忍野村観光協会にお申し込みをしてください。

涌池の鯉は隣の池から水中洞窟を泳いできているようです

世界文化遺産に登録された富士山の構成資産って?

富士山は「信仰の対象」と「芸術の源泉」であることもあり、世界文化遺産に登録されました。その文化的な価値を証明するものとして、富士山そのものだけでなく、昔から富士山と関わりを持つ周囲の神社や登山道、湖沼などが構成資産として登録されています。どんな構成資産があるのか富士山世界遺産センターで調べてみましょう。

富士山世界遺産センターの正面のオブジェ。富士山がかたどられています

まるごと楽しむ富士山 連載

その他の特集を見るother

ホーム > 特集 > 富士講ゆかりの巡礼地を巡ろう!!