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更新日:2021年9月27日

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山梨県立文学館 企画展 「ミステリーの系譜」深まる秋に深まる謎。秋の夜長にミステリーを!

現在、山梨県立文学館にて企画展「ミステリーの系譜」が開催中。(令和3年11月21日まで)
日本の探偵小説を牽引した江戸川乱歩から、金田一耕助シリーズの生みの親、横溝正史や、「人生の阿呆」で直木賞を受賞し、「推理小説」という名称を提唱した甲府市出身の木々高太郎などなど、日本のミステリー(推理小説)の草創期から現代までをたどり、その魅力と人気の秘密を探ります。

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企画展「ミステリーの系譜」の概要

企画展「ミステリーの系譜」は大きく「I-日本のミステリー草創期」と「II-ミステリーの興隆」の二部に分かれています。

I-日本のミステリー草創期

日本のミステリーがどのように産まれたかご存じでしょうか?

黒岩涙香が海外の探偵小説の翻案もの(舞台を日本に置き換えて翻訳)を発表し、文壇に大きな流行を与えた明治20年代~30年代にかけてがその草創期と言われています。

その流れを江戸川乱歩が発展させ、少年探偵団シリーズをはじめ子供から大人まで夢中にさせる探偵小説というジャンルを打ち立てました。

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江戸川乱歩全集と全巻購読者へ進呈された「犯罪図鑑」 

その後、甲府市出身の木々高太郎が「人生の阿呆」という小説で、探偵小説としては初めて直木賞を受賞しました。

木々高太郎は、探偵小説を深化させた推理小説という名称を提唱。日本において推理小説の地位を確固たるものにしました。

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「木々高太郎を喜ぶ会」(直木賞記念会)寄せ書き 寄託資料

1937(昭和12)年6月16日、木々の直木賞受賞を祝い東京京橋の明治屋ビル中央亭で開催。

江戸川乱歩、海野十三、大下宇陀児などが出席した。

今回の展示では、黒岩涙香の傑作「幽霊塔」をはじめ、日本三大奇書と名高い小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」の原稿など、多くの貴重な資料で探偵小説~推理小説の草創期を味わうことができます。

II-ミステリーの興隆

戦後、推理小説は言論統制や自粛から解き放たれ花開いていきます。

第二部では、作家たちの集まり「探偵作家クラブ」の活動や横溝正史の金田一耕助シリーズの草稿、原稿やポスターなどを展示。また、江戸川乱歩自身が撮った山梨旅行の映像など貴重な資料も多数掲出。戦後に生まれた推理小説の潮流を当時の資料と併せて知ることができます。

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横溝正史「八つ墓村」原稿 第11回「鬼火の淵」冒頭 世田谷文学館蔵

「新青年」1950(昭和25)年5月号掲載

作者からの挑戦状!?これを見ずにミステリーを語るなかれ。

1.江戸川乱歩「トリック分類草稿」

分類魔としても知られている江戸川乱歩。トリックの分類表の草稿が展示されています。古細かく分類されたトリック一覧は見ているだけでもワクワクもの。直筆なので乱歩の熱量も感じることができます。これを基に自分で事件を想像してみるのも面白いかもしれません。

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江戸川乱歩「トリック分類草稿」

2.江戸川乱歩「人間椅子」草稿

江戸川乱歩の作品でも人気の高い「人間椅子」。その草稿は、発表稿と設定が大きく異なります。乱歩は何を思いこの草稿から変えたのか……想像してみるのもまた一興。

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江戸川乱歩「人間椅子」草稿 立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センター蔵

「苦楽」1925(大正14)年10月号発表の形と大きく異なる。

3.文豪ストレイドッグス BUNGO STRAY DOGS × 山梨県立文学館
   コラボレーション企画 江戸川乱歩 スタンディ&複製原画展示

大人気漫画文豪ストレイドッグス。江戸川乱歩の等身大パネルに複製原画も展示されています。(撮影可)

「僕がよければすべてよし。」一緒に写真を撮りましょう。

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江戸川乱歩 異能(?):超推理

(番外編)企画展メニュー「真夜中のクリームソーダ」

併設の喫茶「黒蜜庵きなこ亭」では、企画展の特別メニューとして「真夜中のクリームソーダ」が提供されています。一見爽やかなクリームソーダですが、赤いシロップをかけると……まるで殺人現場?

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爽やかなクリームソーダ

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シロップをかけるとまるで殺人現場?

取材後奇

ミステリー……

その昔、摩訶不思議なトリックに心躍らせ、犯人が誰か思いを馳せ、ページをめくる手が止まらなかったあの秋の日。今回の展示は、あの日の自分に戻り、もう一度ミステリーを味わいたいと心の底から思わせてくれる素敵な展示でした。

ぜひ企画展に足を運び、ミステリーの歴史を学び、もう一度ミステリーに挑戦してみませんか?

どうぞどうぞ、世にも不幸な男の、切なる願いを御聞き届け下さいませ。(江戸川乱歩-人間椅子より抜粋)

取材/文:石田

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施設情報

山梨県立文学館全景

山梨県立文学館

山梨県甲府市貢川1-5-35

電話番号:055-235-8080

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