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更新日:2026年1月26日
初夏、芦川の森に可憐な白い花を咲かせる日本すずらん。
その風景は、花の季節だけで生まれているわけではありません。近年、環境の変化により減少する日本すずらんを未来へつなぐため、芦川では長年にわたり、春夏秋冬と年間を通して苗を育てる取り組みが続けられています。圃場や洞窟を巡りながら力を蓄え、再び群生地へ。咲く前の季節にこそ知ってほしい、花を守る物語があります。

現在、芦川で行われている日本すずらんの育成は、ひとつの場所で完結するものではありません。そこには、この地で長年続いてきた保全の歴史があります。
この群生地の礎を築いたのが、消滅の危機にあったすずらんの保護と育成に生涯を捧げた、故・藤本義晴さんです。昭和30年代、乱獲や環境の変化により数を減らしたすずらんを守るため、私財を投じて保全に取り組み、その活動は1970年の県指定天然記念物指定へとつながりました。
藤本さんの想いは、今も地域に受け継がれ、現在の苗育成の取り組みの土台となっており、苗を育てる工程の一つひとつに、その想いが引き継がれています。
群生地、圃場、ハウス、洞窟、圃場、そして再び群生地へ。季節と場所・先人の想いをつなぐように、苗は大切にバトンを繋いでいます。
秋、何年もかけて育成圃場で大切に育てられた立派な株を掘り上げ、11月中旬に井上園芸へ預けられます。そこで株分けされ、ポリポットに植え替えられた苗は、12月中旬までハウスの中で丁寧に育てられます。

ハウスの中で大切に育てられ群生地へ帰る準備をしている日本すずらんの苗
その後、苗は芦川町にある洞窟へと運ばれます。家紋が刻まれた入口から一歩中へ入ると、奥行き約15メートルの空間が広がり、その左右には3つの枝坑があります。この洞窟に、約500ポットの苗が並べられます。

苗をハウスから洞窟へ移動させる

町内にある、個人所有の洞窟の入り口

洞窟内に運び込まれた苗
洞窟の壁は粘土質で、常に湿り気を帯びているため、水やりはほとんど必要ありません。温度も一年を通しておよそ0〜15℃に保たれ、日本すずらんがゆっくりと力を蓄えるのに適した環境です。
苗はここで、春を待ちながら静かに冬を越します。
4月上旬頃になると、苗は再び笛吹市役所芦川支所の圃場へ戻され、今度は天日で育てられます。夏の光を浴びながら8月頃まで成長した苗は、地元の観光協会のメンバーによって群生地へと運ばれ、翌年以降の観賞用として植えられます。
こうした工程を繰り返すことで、少しずつ日本すずらんの数は増え、群生地の景観が守られています。花が咲く季節だけでは見えない、地道で丁寧な積み重ねが、毎年の風景を支えています。
8月下旬~9月中旬には、日本すずらんの苗を群生地へ植え替える作業が行われます。この植え替えの一部を、体験としてご参加いただけるツアーを現在企画中です。
花を「見る」だけでなく、その風景が生まれる過程に少しだけ関わる——そんな時間を、芦川の自然の中で過ごしてみませんか。
開催日や内容の詳細は、決まり次第お知らせします。
日本の原風景が残る芦川町の豊かな自然と暮らしの魅力を、移住の第一歩を後押しする「若者定住促進住宅」の情報とともに紹介します。
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