おもてなしの達人に会いに行こう！名湯百選の宿「下部ホテル」

取材に向かうと加藤さんがホテルの正面で出迎えてくれました

おもてなし検定1級合格にあたって

インタビューを受ける加藤さん

加藤さんがおもてなし検定を受けたきっかけは周りからの影響でした。特に「お客様への気配りが素晴らしく、所作も美しかった」という憧れの先輩が受験するのをみて、「自分も受けてみよう」と考えたそうです。

3級、2級と順調に合格できたそうですが、2021年に挑戦した1級の試験では先述の先輩は合格だったのに対し、加藤さんは不合格。悔しい思いをしました。「二次試験では面接があったのですが、緊張のあまり考えがまとまらず、普段自分がやっていることを言葉にして表現したり伝えたりすることができなかったんです」と加藤さんは振り返ります。

しかし、不合格だったことはむしろ良かったのかもしれない、と言います。「1回落ちたことで自分自身を見直すきっかけになりました。おもてなしとは何なのか？ということから始まり、自分ができていること、できていないこと等の整理ができました」。
1年後である2022年、自分自身を見つめ直した加藤さんは悔しさをバネに、見事合格することができました。

加藤さん流のおもてなし

お客様をお出迎えする加藤さん

加藤さんにとって“おもてなし”とは何なのか聞いてみました。
「難しいですね」と笑いながらも「お客様の名前を呼ぶように心がけています。お客様が帰られたときも様子を見ながら話しかけて、コミュニケーションをとるようにしています」と話してくれました。

そして、「何よりも一番は“笑顔”かな」とのこと。「おもてなし検定のときも、周りの従業員からも笑顔を褒めてもらったんです。元々私は笑顔って特別なものだと思っていなかったんですけど。それが自分の武器なんだって知ることができました」「私にとってのおもてなしは“笑顔”です」と、やはり笑顔で語る加藤さん。

確かに、私たちを出迎えてくれたときから取材の最中もずっと笑顔を絶やさなかった加藤さん。これには納得です。

指導する立場として

下部ホテルの和太鼓演奏。加藤さんが太鼓を叩くこともあるといいます

おもてなし検定1級取得には知識に加え、実務能力や指導・育成ができるレベルであることが求められます。加藤さんも下部ホテルの中ではサービス部のチーフであり、実際に後輩を指導する立場にあります。
「肩書きが偉そうに見えてしまうので、近寄りがたくならないように気をつけています。こちらから挨拶したり声をかけたりとか（笑）」とはにかみながら、後輩との接し方を語る加藤さん。

また、「チーフという立場は後輩を育てるのはもちろんですが『育てる人を育てる』ことも求められてくるんです」「あまり自分から口を出しすぎないように気をつけていますが、何かあったときはすぐに相談するようにお願いしています」と、後輩を指導する難しさや気をつけていることを教えてくれました。

「後輩がお客様の接客をしているとき、自分が教えた以上のことをやっていることがあるんです。そんな時は成長を感じられてとても嬉しく思います」
逆に、後輩の所作を真似させてもらうこともあるそうです。

今の職場は職員同士のコミュニケーションも取れていてとてもアットホームなところがあり、出来るだけ長く働けたら良いと感じているそうです。そういう雰囲気はおもてなしの達人である加藤さんが作り出しているのではないかと感じました。

社長からの信頼も厚い

インタビューに応じていただいた矢崎社長

「ほぼ同じくらいに入社したんですよ。10年以上経ちますが、その間環境の変化とともに働き方も変ってきた中で柔軟に対応して長く働いてもらえて良かったと思っています」「本人が持っているスキルは素晴らしいです。これからも指導を行いながら、若いスタッフの道を作っていってくれることを期待しています」と語る社長からは厚い信頼を感じ取ることができました。

“おもてなし”はなかなか目に見えるものではありません。ですが、1時間ほどの僅かな時間で私は“おもてなし”を感じることができました。それは加藤さんの“笑顔”や加藤さんとお話しをした“時間”だったのではないでしょうか。
日本の中でも最上級の“おもてなし”を求めて、下部ホテルに、加藤さんにぜひ会いに行ってみてください。

取材・文／岡・丸山（取材日：2023年2月9日）

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