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更新日:2023年12月15日

やまなし大使・内山しのぶが取材~移住して活躍する人々に聞く「夢が見られる山梨♡夢を叶える山梨」第3回 帽子デザイナー・飯田美和子

他県からの移住者が増え続ける山梨県。山梨で生まれて山梨で育った人にはわからない“山梨の魅力”はどこにあるのか?
やまなし大使でもある内山しのぶが多方面で活躍する老若男女に取材インタビューしてお届けする連載。第3回は北杜市高根町に2世代で移住した飯田美和子さん(『Mia Hat&Accessory』帽子デザイナー)に話を聞いた。

第3回・家族全員の夢が叶った場所

『Mia Hat&Accessory』帽子デザイナー・飯田美和子

帽子デザイナー飯田さん

企業で帽子デザイナーとして積んできた経験を生かし、本当に納得のいく物作りをしたいと想いをこめて立ち上げたブランドが『Mia Hat&Accessory(外部リンク)』。一点一点、デザイナーとしてデザインやかぶり心地など細かい所まで気を配り、アトリエ製作ならではの手作業を大切に制作活動を行っている。年二回の東京での展示会で受注生産。有名百貨店や人気セレクトショップなどに作品が並ぶ。2023年9月初めてのパリのプルミエール・クラスに出店。イタリア留学で学んだ技術を生かした帽子は、海外からのオーダーも入るようになり、帽子アーティストして注目されている。

岐阜(東京)から山梨へ移住するまで

ここには親戚もなく縁もゆかりもなかった土地ですが、車好きの夫の友達が山梨に沢山いまして、ドライブがてらしょっちゅうきていました。コロナ前くらいから、東京の暮らしを息苦しく感じていたんです。夫も輸入の仕事でアジアやアメリカによく行っていて、そこで感じた豊かな生活に憧れていました。そんな時コロナも始まり、いろんなことを考え移住を決めました。ちょうど岐阜に住む両親が定年退職を迎え、当初の沖縄に住む予定を変更して、私たちの移住の話に乗ってきました。小学生の娘も大喜びで、東京と岐阜の中間地点の山梨に二世代で移住することを決めました。

最初は「将来リニアモーターカーも通るだろうし」と、東京に近いアルプスや甲府で物件を探していました。北杜市は清里のイメージが強く、寒冷地で東京からも遠いイメージで視野に入っていませんでした。ところが、100軒近くの古民家の物件を見ましたがなかなかこれだというものに出会えず…。「ついでに北杜市も見てみようか」と、あまり期待もせずにここ高根町箕輪に来たとたん、素晴らしい景色に二人とも心を奪われました。

清里も同じ高根町ですが、高根町は縦に長いのでここと清里とは気候が違い、それほど寒さを心配しなくてよいことがわかりました。そしてなにより、この古民家に一目ぼれでした!築70年の御蔵付きの空き家でしたが、ご親族がちゃんと管理していたので傷みもなく、戦後の建物なので、土台にコンクリートも打たれていて建築としてもしっかりしていました。信じられないことに、この古民家は家族全員の夢が叶う物件だったのです。

帽子デザイナー07
築70年の古民家

私の「帽子作りのアトリエ兼ギャラリーが欲しい」という夢、夫の「輸入業の倉庫に趣味の車やバイクが置ける広い場所が欲しい」という夢、そして定年退職した父の「残りの人生で畑をやりたい」という夢がすべて叶う、広々とした敷地に畑までついている、ドンピシャの物件だったんです!!ちょうど2021年のコロナ中です。そしてここは、帽子作りの勉強で行っていたフィレンツェの景色にも似ています。

アトリエ入口
『Mia Hat&Accessory』アトリエの入り口

アトリエ
馬小屋として使われていた土壁の残る空間をアトリエに改修

アトリエからの景色
アトリエの窓からは長閑な高根町の風景が広がる

ミシン
年代ものの帽子用の縫製ミシン

築70年の古民家の改修

リフォームは夫が自らやろうかなと言っていたのですが、移住がきまりご近所にご挨拶回りをした日に最後に尋ねたお隣さんが設計事務所で、この地域の古民家の改修をたくさん手掛けてらして、そこに移住してきた家族も多いんです。伊豆や千葉、川崎といった関東の方が多いですね。改修した古民家も見せていただきましたがとっても雰囲気が良く、夫とも意気投合して、監修をお願いしました。物件も素敵でしたが、こんな方がお隣さんにいるという素敵な巡りあわせにも驚きました。私たち家族のこともよく考えて設計してくださり、職人不足のコロナ渦でもあったので引っ越すまでに1年かかりましたが、とても快適な家になりました。

リビング
もともとの古民家をいかした空間にアジアの家具がセンスよく配置されているリビング

美しい襖絵
きれいに残っていた美しい襖絵をそのままいかした、無国籍なセンスを感じるインテリア

襖
家族5人のために広々とした玄関に改修。この襖ももともとあったもの

帽子デザイナーとして

岐阜県出身ですので、もともと名古屋の帽子の会社でデザイナーを6年やっていました。そのときはデザインを描いて工場に送ってサンプルチェックのみをする仕事でした。新しい帽子を大量に企画し、次から次へデザインする仕事は楽しかったのですが、自分の帽子を一から全部自分で作ってみたくなり、退職しました。帽子作りを一から勉強をするためにイタリアフィレンツェに短期留学に行きました。『GREVI』というフィレンツェにある兄弟3人でやっている老舗帽子メーカーです。そこに滞在して帽子作りを学び、帰国して結婚。結婚後は東京の帽子のアトリエでアシスタントとして勉強しました。

その後自分のブランド『Mia Hat&Accessory』を立ち上げたのが2015年です。東京の自宅の2階の小さな一部屋でデザインから制作までやっていました。レンタルスペースなどで展示会を年に二回行い、受注生産で百貨店やセレクトショップに卸しはじめました。最初は帽子4型くらいからスタートしましたが、ブランドを立ち上げて8年目の今、年に二回の東京での展示会では、変わらない定番の帽子10型に新作の帽子やアクセサリー10型くらいを毎回発表しています。帽子の生地の仕入れは、東京や岡山など地方各地の問屋に自ら足を運び、色味や材質を厳選したり、デッドストックなども探しています。

新作帽子コレクション
2024年の新作帽子コレクション

新作帽子コレクション
どれもとても素敵!

 

ここにアトリエを作り、両親といっしょに住むことによって、仕事にも集中できるようになりました。娘も大きくなったので今年は海外の仕事にもチャレンジできたんです!!夢だったパリのプルミエール・クラスに2023年9月29日から10月2日の4日間、出店しました。(注釈・パリのファッションウイーク期間中に行われる、世界中から集まるファッション小物を中心にした見本市)小学5年生の娘を置いて出かけた久しぶりの海外出張でしたが、母と父がいてくれるので安心して行くことができました。東京にいたらこんなに早く夢は叶わなかったと思います。

プルミエール・クラスは厳しい審査がありLOOK(帽子のコレクション)とプロフィール書類を提出して合格。パリの展示会場はたったの1メートル×3メートルの小さいブースでしたが、NYやフランス、イタリア、イギリス、韓国からオーダーいただき、夢の可能性を感じたチャレンジでした。二人で手荷物で運べる範疇のサンプルしかもって行けませんでしたが、ファッションウィークでパリに来ている素敵な海外のいろいろな方に、私の帽子を褒めていただき、自信がつきました。彼らが日本人と全く違うセレクトをすることも勉強になりました。東京から田舎に引っ越したことで、逆に世界が近くなるなんて思ってもみないことでした。

作品
アトリエの壁塗りや帽子スタンドもおとうさまの手作り

ヘアバンド
ヘアバンドやターバンなどのアクセサリーも

高根町の良さ

クリエーターとして、これ以上いい環境はないくらい気に入っています。2022年の夏に引っ越してきたので、四季を一年しか過ごしていませんが、春夏秋冬とここの気候の良さをしみじみ感じています。北杜市の夏はエアコンがいらないくらい涼しいんです。特に古民家なので風通しもよく夏は本当に気持ちがよい。冬はもちろん寒くて厳しいけれど、リビングに床暖房と石油ストーブがあれば十分です。

そして春になったときの喜びはひとしお。前の家主さんがお花好きだったようで、フクジュソウが咲いて、いろんなものが芽吹きだすと、「あー、こんなところにこんな花が咲くのね」と受け継いだ庭を楽しんでいます。桃の花も梅も柿の木もあり、梅仕事もしました。柿酢なんてものも作りました。庭でとれる果実で食卓を彩る生活は本当に豊かだと思います。

5人家族全員のライフスタイルが豊かになっています。畑仕事一年生の父が作る野菜も豊作でした。さらに北杜市は自給率が高く、父の作っていない野菜は隣近所の方がご存じで届けてくれるんです。「はたして移住者がうまくやっていけるのだろうか」と懸念もありましたが、この土地はいい方ばかりで人に恵まれています。娘は虫だけがまだ苦手です(笑)。最近娘から聞いて知ったのですが、実は東京での人間関係が少し苦手だったそうです。今は学校も習い事も毎日のびのびと楽しそうに通っている娘の様子を見て、「娘にもここが合っているのだなぁ」と嬉しく思っています。

北杜市はお水が美味しいから美味しいパン屋さんも多いです。個人経営のこだわったレストランもたくさんあり、お洒落なお店には県外ナンバーの車がたくさん停まっています。子供を連れて出かけられる場所もたくさんあります。よく行くのは「まきば公園(県営の公園)」やキャンプ場の「べるが」、東京ではありえない場所が日常の延長にあります。

車で走っているだけでも景観が素晴らしく「なんて素敵な場所なんでしょう!」と毎日飽きることがありません。東京生まれ東京育ちの夫も東京に未練はないそうです(笑)。移住して生活のベースが豊かになることで、確実に家族5人の世界が広がっています。フィレンツェなど静かでのんびりした海外もいいけれど、日本の地方って素晴らしいです!とくにここ山梨の北杜市高根町は移住者を迎えてくれる懐が深い場所だと思います。

アンティークカー
輸入業を営む車好きご主人の夢が叶った御蔵

連載タイトル『夢が見られる山梨♡夢を叶える山梨』をまさに体現している飯田さん。ご家族全員が住む場所を変えたことで、まさしく、それぞれの夢が広がっていった素晴らしいケースです。フットワークの軽い生き方が、年齢問わず夢を引き込む力になると改めて思いました。高根町の美しい景色からインスパイアされて世界へ発信していく、アーティスト飯田美和子さんの作品がこれからも楽しみです!

インタビュアー&文

内山しのぶ

内山しのぶ様

山梨県甲州市勝沼町生まれ。やまなし大使。1989年編集者として(株)世界文化社入社。女性誌『家庭画報』副編集長を務めた後、料理雑誌『家庭画報デリシャス』編集長。『MISS』『MISS ウエディング』『きもの Salon』『GOLD』の編集長を約 12 年間務める。2016年~現在 (株)集英社HAPPY PLUS STORE サイトにてコンテンツマネージャー。アーティスト本の企画編集刊行なども務める。

料理家として、調理師免許、国際中医薬膳師、マクロビオティックコンシェルジュ、オーガニック料理ソムリエなどの資格を持ち、料理雑誌や企業の刊行物にレシピを寄稿。自宅アトリエでヌーヴェル薬膳料理教室をオープン。著書に料理本『しのぶ亭へようこそ。編集長のおうちごはん』がある。

2019年甲府市・昇仙峡の再活性化をめざす「昇仙峡リバイバル会議」でアドバイザーを務め、「お座敷列車で行く山梨県峡東ワインリゾートツアー」など山梨のPRに関わる。

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