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更新日:2025年9月16日
2024年から始まった、山梨県埋蔵文化財センター・久保田健太郎さんが「甲府城」の奥深い魅力について紹介する連載企画。9回目より同センターのももちゃんが担当します。
今回は、甲府城跡で特に写真映えするスポット「稲荷櫓」と四季の花について紹介します。
目次 |
甲府城について紹介するのは・・・
山梨県埋蔵文化財センター
主任・文化財主事
ももちゃん
横浜出身。就職のため山梨県へ移住。大学では縄文時代の考古学を勉強したけど、現在は甲府城担当として日々石垣とにらめっこ中。気づけば30代、気づけば石垣沼。大きな石にトキメキを感じる。
甲府駅を見下ろす甲府城の稲荷櫓(いなりやぐら)は、平成16年度に復元された白く美しい二重櫓。武器や武具をしまう倉庫だったと言われています。どっしりと構える野面積み(のづらづみ)の石垣【野獣】の上に建つ白く輝く櫓【美女】。稲荷櫓周辺は「舞鶴城公園あじさい広場」として整備されており、無骨さと優美さの対比が際立つ景観が広がります。桜やツツジ、アジサイ、青々とした緑、そして雪【美女】が咲き誇る光景は、まるで「美女と野獣」の世界!四季折々に変わる美しい景色を楽しめる、甲府城跡で特に写真映えするスポットです。
甲府城俯瞰写真より、稲荷櫓周辺の「舞鶴城公園あじさい広場」
桜と稲荷櫓
ツツジと稲荷櫓
アジサイと稲荷櫓
雪化粧の稲荷櫓
さらに、稲荷櫓の内部は展望舎としてだけでなく、甲府城の概要や発掘調査で見つかった瓦などの展示も充実!2階には柳沢氏が城主だった18世紀初頭頃の復元模型が設置されており、かつての甲府城の姿に思いを馳せることもできます。
甲府城の復元模型。こんなに広かったんだ!と実感できるね
「お城」と聞くと、多くの方は天守閣や櫓など建造物を思い浮かべるかもしれません。でも、石垣を知ると、その美しさに目を奪われることも(私はすっかり石垣ファン!)。ここでは、加工されていない黒い自然石が、平らな面をオモテにして整然と積まれた野面積み石垣【野獣】が、見る者を圧倒します。
野面積みとアジサイ
梅雨の時期に訪れると、赤や青、白の彩り豊かなアジサイ【美女】が咲き、石垣との対比が絶妙な景観を生み出します。撮影すれば、背後に石垣や櫓が映り込み、色鮮やかなアジサイと黒々とした石垣のコントラストが際立つ美しい写真が撮れます。儚く咲き、やがて枯れるアジサイの姿と、数万年の悠久の時を経ても変わらずそこに佇む石垣の石──「美女と野獣」のような対立と調和の瞬間を感じに、ぜひ現地へ足を運んでみてください。
鮮やかな青の中に佇む石垣
写真の背後に見えるのは、ゆるやかな勾配をもつ石垣の角。甲府城跡の石垣の多くは、根元から反らず、最上部のみが反る直線的な勾配を特徴としています。まれに根元から反るものもありますが、この反りの少ない石垣は、古い時期のものに多く見られる傾向があります。
石垣の角度に注目!
低い石垣を除けば、角度はおおむね55〜60度です。あじさい広場からは、アジサイと古い時期の特徴をもつゆるやかな石垣角を一緒に写真に収めることができるのでオススメ!古さを表す無骨な石垣【野獣】と彩り豊かなアジサイ【美女】が織りなすコントラストは、まるで時を超えた物語の一場面のようです。
冬は植物が枯れて石垣が主役に!
あじさい広場を南東側に出ると、最上部のみ反った石垣角を外からじっくり観察できます。この石垣は高さ約17mを誇る、甲府城内で最も高い石垣なのです。
甲府城イチ高い石垣は圧巻!
甲府城跡の中でも、特に四季の移ろいを感じられるのが稲荷櫓周辺とあじさい広場です。春から初夏にかけては、桜やツツジ、アジサイなど、艶やかな花々【美女】が咲き乱れ、白く輝く櫓【美女】と古い時期の石垣の特徴をもつゴツゴツの石垣【野獣】とのコントラストが楽しめます。
こんな光景を見ることができるのも、古い石垣の特徴があるからこそ。
カメラを片手に、ぜひ現地で“美女と野獣の共演”を体感してみてください。季節ごとに異なる表情があなたを待っています!
(例年、11月上旬~中旬には紅葉が楽しめます。)
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山梨県埋蔵文化財センターでは、昨年も大盛況だった全4回のウォーキングイベント「甲府城が大好きな私たちと歩く、城・城下町さんぽ2025」を開催しています。 実際に甲府城を歩きながら、講師の丁寧かつ軽快なトークで甲府城について楽しく学べます。参加した後は、きっと誰かに話したくなる!? |