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更新日:2025年6月4日

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入手困難な希少ワインが飲める! 山梨の4つの注目ワイナリー 第4回『7c|seven cedars winery』|やまなし大使・内山しのぶ取材

日本ワイン生産量及びワイナリー数日本一の山梨県。日本国内で栽培され醸造されたワインを日本ワインと呼ぶが、山梨県だけでもその数100ワイナリーになる。昨今注目されているのは、小規模ながら造り手が葡萄栽培をして醸造し、販売まで手掛ける個性のあるワイナリーだ。流通量が少ないゆえ、まださほど知られてはいないのにワイン好きの間では人気が上昇している。今回はそんな4つのワイナリーと入手困難なワインが飲めるお店をご紹介。

第4回 南都留郡 富士河口湖町 『7c|seven cedars winery(セブンシダーズワイナリー)』

河口湖エリア初の
ワインづくりに挑戦する
『7c|seven cedars winery』

鷹野ひろ子さん
「7c|seven cedars winery」栽培醸造チーム統括 鷹野ひろ子さん

2022年8月に河口湖にオープンした『7c|seven cedars winery(セブンシダーズワイナリー)』。名前の由来は、ワイナリーからクルマで数分の「河口浅間神社」の天然記念物・七本杉から命名。醸造チームを統括するのは、「勝沼醸造」や「フジッコワイナリー」で長くワイン製造を行ってきた鷹野ひろ子さんだ。

取材に伺った日はちょうど春以降にリリースされるスパークリングワインの動瓶作業をしていた。寒い室内でワインボトルを手作業で1本1本逆さにしてオリを瓶口に集めていく。

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「年間のリリースがまだそんなに多くないので、栽培と醸造は年間スケジュールを踏まえて基本4名のスタッフが手作業で管理しています」

ここ河口湖は寒冷地ゆえ、かつては果樹が育たないエリアとされていた。「ここで葡萄が育つのだろうか?」という疑問を鷹野さんに投げかけてみた。

「地球温暖化により世界的に見てもワイン葡萄が作られる場所は次第に北へ移っています。河口湖も氷がはることもなくなり、マイナス10度を下回る日は稀になってきました。未来を考えたらここでワイン葡萄栽培はできると判断しました」

とはいえ富士河口湖町の遊休農地のほとんどは水田。水田土壌を葡萄畑土壌に変えることから始めたという。

「水田でしたからね。粘土質の表層の下には、かつて幾度となく起きた川の氾濫により、峠から流れてきた砂利や礫土がありました。その80cmの層を天地ひっくり返して、踏み固めず、大きな石は周りに配して、水はけを改善し整地しました」

富士河口湖町は日照時間が多い山梨県の中では比較的日照量が少ない地域。「借りた遊休農地はどこもワイン葡萄作りに合っているわけではないので、太陽のあたり方を加味して農地ごとに植える葡萄の品種を変えている」と語る。

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鷹野さんには、このワイナリーに携わる以前から想いがあった。

それは醸造家ばかりが前に出るのではなく、長い間一緒にワインを作ってきた葡萄農家である生産者に光をあてることだ。醸造家も葡萄生産者もお互いをリスペクトし、「自分たちがワインを作っている」という高い意識を持つチームを作りたかったという。

ボトルラベルには生産者の名前がすべて入っている。生産者2人からの葡萄を使いワインをMIXする場合は2トーンのラベルでデザインされ、その面積比率が栽培者の原料構成比になっている。

 

ボトルラベル

契約農家のほとんどは、甲州市勝沼町の生産者だ。

勝沼は土壌というより立地がワイン葡萄畑に適している場所が多いという。すり鉢状の盆地のちょうど斜面にある段々畑は日当たりと水はけがとてもよいそうだ。

「とはいえ同じテロワールで同じ品種でありながら、生産者によって全く違う葡萄ができるんです。作り手が葡萄に出るんですね。ですから私は、同じ品種の葡萄であっても生産者ごとに分けてタンクに入れて生産者の個性が際立つように醸造します。

生産者の方も出来たワインを飲むと、同じ甲州葡萄を使って近い畑で生産しているのに味がおもしろいくらい違うねと驚きます」

同じ品種でも栽培者ごとにまったく異なる味わいや個性があります。それをワインに昇華するために、醸造所は栽培者ごとにブドウを発酵させる設計になっている。

発酵は栽培者ごとに分けてステンレスタンクや木樽で行う。この後、樽熟するものは樽に、そのまま熟成するものは澱ごとタンクの中で寝かせる。また、ワインによってはアサンブラージュ(違うワインを組み合わせること)して製品となっていく。そのタンクが一目で見渡せて醸造中のスケジュールを設計しやすい形になっているのが、この醸造所の特徴だ。特にこだわったのがストレスなくタンクを移動できる、床上クレーンの設置だ。人手も時間も、極力無駄を省いた醸造所での仕事は気持ちがいい、と鷹野さんは語る。

醸造所内
計算つくされた配置になっている醸造所内

木樽
木樽

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醸造所に設置されている床上クレーン

 

『7c|seven cedars winery』は2022年からスタートし、2022年12月に記念すべきファーストヴィンテージ「デラウェア&ジーガレーベ スパークリング2022」がリリースされた。

今現在、すでに14銘柄がリリースされている。

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そして来年は自社畑から初収穫された富士河口湖町の銘柄がリリースされる。

収穫されたのはシャルドネ、メルロ、プティヴェルト、ソーヴィニヨンブラン、プティマンサン、ケルナー。

寒冷地で育った各圃場のぶどうが、はたしてどんなワインに昇華させているのか2026年秋が楽しみだ。

『7c|seven cedars winery』にワインが飲める宿もオープン!

7cvilla

2024年7月にワイナリーのすぐ近くに新たなワインの楽しみ方として、日本初の「ワイナリーヴィラ」がオープン。

職人こだわりの木製家具やどのお部屋にも付いている信楽焼の風呂桶。地元随一の庭師が丹精込めて作り上げた庭園からなる宿は、部屋数10室。

部屋
ゆったりと庭園を眺めながら過ごせる

信楽焼の風呂桶
信楽焼の風呂桶

 

ディナーは「ワインが主役の料理」でメニューを構成。シンプルな調理法にこだわった地元牛と地鶏のコースを楽しむことができる。

ラウンジではグラスで何種類かのワインが楽しめ、お土産にワインも購入できる。

ディナー
ディナーコース

ラウンジ
ラウンジ

宿泊客にはチェックイン前の14時15分頃より「特別Wineryアテンドツアー」と題して醸造所見学、畑のご案内など、『7c|seven cedars winery』にまつわるその時期にしかお伝えできない情報や、季節ごとの「物語」を楽しめる。

作り手のこだわりを、ワイナリーのすぐ近くの素敵なvillaでゆっく味わってみて。

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施設情報

7cvilla&winery

7c villa & winery

山梨県南都留郡富士河口湖町河口 512-2

電話番号:0555-25-7668
(Reservation inquiry hours / 9:00-17:00)

施設の詳細を見る(外部リンク)

インタビュアー&文

内山しのぶ

内山しのぶ様

山梨県甲州市勝沼町生まれ。やまなし大使。1989年編集者として(株)世界文化社入社。女性誌『家庭画報』副編集長を務めた後、料理雑誌『家庭画報デリシャス』編集長。『MISS』『MISS ウエディング』『きもの Salon』『GOLD』の編集長を約 12 年間務める。2016年~現在 (株)集英社HAPPY PLUS STORE サイトにてコンテンツマネージャー。アーティスト本の企画編集刊行なども務める。

料理家として、調理師免許、国際中医薬膳師、マクロビオティックコンシェルジュ、オーガニック料理ソムリエなどの資格を持ち、料理雑誌や企業の刊行物にレシピを寄稿。自宅アトリエでヌーヴェル薬膳料理教室をオープン。著書に料理本『しのぶ亭へようこそ。編集長のおうちごはん』がある。

2019年甲府市・昇仙峡の再活性化をめざす「昇仙峡リバイバル会議」でアドバイザーを務め、「お座敷列車で行く山梨県峡東ワインリゾートツアー」など山梨のPRに関わる。

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