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インタビュー 今中大介 今中大介さんに「自由になれる」自転車の魅力をインタビュー

世界の名コースに匹敵する景観が山梨にはある 元自転車ロードレース選手今中大介さんが語る 自由になれる 自転車の魅力 ヒルクライムインタビュー 今中大介 元自転車ロードレース選手 引退後は株式会社インターマックスを設立

自転車で高いところに登るという原体験

今中さんご自身のことについて教えてください。どんな子どもでしたか?

機械いじりが好きな子どもでした。その頃はプラモデルがすごく流行っていて。作った車を友だちと競争させたり、模型の飛行機を作ったり、スポーツとは縁遠い少年時代でした。機械いじりが好きというのは、今の自転車に通じますね。自転車、特にロードバイクは作りがすごくシンプルなんですよ。スピードだけを追求したようなマシン。それが魅力的だと思います。

自転車に興味を持ったきっかけは?

僕たちが子どもの頃は、自転車が唯一の遊び道具みたいな感じでした。自然に高台に登るようになって、おのずとスピードを出して下るようになって。高いところから落ちたり、転んだり。そのあとオートバイや車にも興味を持ちましたが、自転車の魅力は自分で走って行って違う景色を味わえること。中学生の頃からスピードが出せるような自転車に、高校生の頃にロードバイクに乗り始めました。本格的に始めたのは大学2年生のとき。通っていた九州の大学でサークルを立ち上げたんですよ。下宿先の1年生を無理やり勧誘して(笑)。

大学を卒業してシマノに入社したのですね。日本人として初めて出場した「ツール・ド・フランス」は今年100回目の開催です。日本を代表するヒルクライム大会「Mt.富士ヒルクライム」は今年10回目の開催でしたね。

「Mt.富士ヒルクライム」も続けていけば100回になりますからね。どんどん人気が出るでしょうし、すでに応募してもエントリーできないという状態。憧れの大会という意味ではずっと続いていくと思うし、それを期待したい。片や「ツール・ド・フランス」は100回。自転車屋だったライト兄弟が飛行機を飛ばし始めたのと同じ1903年から続いている。その頃からアルプスやピレネーという山岳を登るような、非常にきついコースだったんです。「ツール・ド・フランス」初開催の年は、都市と都市を結んで行くひと区間400km~600km×6ステージのコース。「パリ・ダカール・ラリー」みたいな感じですよね。そんな過酷なレースだったんですよ。

山梨は景観が良くて自然がそのまま残っている

現役を引退されて、なぜ山梨でインターマックスを設立しようと思ったのですか?

妻が山梨の出身なんです。海外で走っていたときに、そろそろ体も動かなくなってきてもう限界かなというときに、どうしようかな、ショップでも始めようかなと思って。それで、山梨で輸入代理店をしようかなと。山梨ではそれ以前に個人的な合宿などをしていたんですよ。ロードレースは町から町に移動して行くレースなので、これまで様々な地域をまわってきました。シマノレーシングにいた頃にヨーロッパ各国や日本国内も行きましたけど、山梨はそんなたくさんの地域の中でもすごく景観が良くて、自然がそのまま残っているという意味で魅力に感じて。それで好きになって山梨に来たんです。

自転車に乗りたくない時期もあった

山梨に来て生活は変わりましたか?

会社を始めてすぐは忙しくて、自転車に乗るどころではなかったんです。選手の頃は、プロですから結果を出すのが当たり前。そこから1度、自転車に乗りたくないという欲求が出てしまって。とにかくゆっくりしたい。それで乗らなかった時期もあるんです。必死になって会社のことをやっていましたけど、1年くらい経ってやっぱり乗らないと体に良くないなと思って。それで乗り始めたら今度は楽しくて仕方がない。再発見です。選手の時とは違いますね。もう追うこともなく追われることもなく、自由に乗ることができる。それがもう本当に楽しくて。

山梨の太良峠は、選手の頃に走っていた激坂に近いんですよ。そういうのを思い出しながら登ったりしました。春にベルギーのフランドル地方で、石畳を使った有名なレースがあるんです。太良峠はそれを疑似体験できるようなコースですね。他にも、イタリアのドロミテに近いようなコースとか、アルプスのような雰囲気のコースとか。盆地のような初心者でも楽しめるものから、プロを目指すような、プロ養成坂があるようなものまでチャレンジできるコースが山梨にはたくさんある。

山梨の景色といえば、桃の花にはびっくりしました。そんな景色は人工的にできるものじゃない。その時期わずかな期間なんです。徐々に咲き始めて、満開を迎える瞬間があって、そのときに合わせてよし行こうって気持ちが高まって行く。ちょうど良いタイミングで行けたときは幸せですね。あとは、七里岩ライン。武田勝頼の城である新府城の辺りの、アップダウンをこなして行くコースも気に入っています。そのまま行けば長坂、清里へ。寒い時期はその凛とした空気感が良くて、春になると心地良く登って行けて、夏はうだるような暑さの中何時に出ようかと計算しながら。季節に応じて楽しめる。

自転車は小さな冒険をしている気分になる

自転車、そしてヒルクライムの魅力とはなんでしょうか?

自転車は、自由を与えてくれる乗り物ですね。もちろんマナーは守らなくてはいけないのですが、その上で乗り方は自由です。ゆっくりサイクリングしてもいいし、本気になって鍛えるための走りをしてもいい。気持ちも自由にしてくれますね。登り坂と言うのは足を緩めるわけにはいかないですよね。ずっと漕ぎ続けなきゃいけない。最初は辛かったりするんですけど、チャレンジして克服していく喜びというのが感じやすい。自転車は小さな冒険をしている気分になりますし、そうやって色々なところを巡って行って日々小さな人生の積み重ねみたいな経験ができる。そんな喜びがありますね。

そうやって行くうちに1,200mの標高差がある「Mt.富士ヒルクライム」を完走するのも、大きな自分の目標になってくる。いかに早く走れるかっていうことに挑戦したくなる。目標をクリアしていくたびに新たな目標が出来てくる。数分短縮するだけでもガッツポーズです。ゴールが近づいてくるともう、何十秒短縮するということしかできなくなる。ときにはもう目標タイムを過ぎちゃった、一年間頑張ってきたのになんてことになってしまうこともありますが、それを含めて乗り越えて行くのが楽しみになりますね。挫折は仕方がない。でもそれをはねのけて行く。それをなんとか克服した時の喜びは、順調に行っているときとはまた違う喜びがありますからね。

これから始めるひとへ、アドバイスをお願いします。

最初は5万円くらいの自転車でもいいんですよ。重いマウンテンバイクタイプのものでも。気持ち良く走るのが一番だと思いますね。それで週末に少し身近なコースを実際に走ってみる。最初はきついかもしれない。やってみると、ああなんだ自分でもなんとか行けるじゃないかという気分になれる。5年くらい前から女性のライダーも増えてきました。街でロードバイクを見かけて、わたしでも乗れるかもしれないと思って実際に乗って楽しさを知って、女子会ができたり。以前は想像できないことでした。

子どもの頃って誰でも、がむしゃらに遊んで楽しめるじゃないですか。大人になるそういうことは減って行くと思うんです。著名なレーシングドライバーの方が遊びに来ることがあるのですが、皆もう必死でフルーツラインや甲府盆地を自転車で走る。それも全力で走るんです。競り合いながら、ときには雄たけびを上げながら(笑)。そういうのを大人になってできるというのは、実に面白いスポーツだなと思います。

今中大介プロフィール

1998年より山梨県甲府市在住。
シマノレーシングの選手として国内タイトルを総ナメにし、1994年プロに転向。1996年に日本人のプロロードマンとして唯一「ツール・ド・フランス」に出場する。1997年の「ジャパンカップ」を最後に引退。
現在は自転車の輸入を主な業務とする株式会社インターマックスの代表を務める傍ら、スポーツサイクルアドバイザーとしてテレビやラジオに出演するほか、ゲストライダーとしてヒルクライム大会などのサイクリングイベントに出場している。

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